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第3回 麹町 ARGO 田坂嘉隆氏 第1章 田坂シェフの美しい盛り付けはアートである。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

麹町1丁目にある「ARGO」は、ONE FOUR TWO by tojoビルの9階にあるフレンチレストランである。窓から荘厳にして美しい皇居が真下に見え、またその遙か遠くに丸の内のビル群が見え、東京駅が見える。この息を飲む絶景は、「お見事」としか言いようがない。まさにこれは一服の絵画である。
今回のイケメンシェフ田坂嘉隆シェフは、このレストランを任されてまだ1年も経っていないというのだが、出てくる料理はどれもこれもこの絶景に負けないほど美しく、美味なるものであった。本人も自信に満ちていて気持ちがいい。
資生堂からのゲスト、川口朋子さんは「うわっ、素晴らしい風景ですね。皇居を真下に見たのは生まれてはじめてです!」と感嘆の声をあげた。

シマジ:田坂さん、こちらがこの連載で毎度お馴染みの立木先生です。

田坂:光栄です。立木先生は、以前上柿元勝シェフの料理を撮影して本を出されていますよね。上柿元シェフはわたしの師匠なんです。

立木:それじゃ、あなたは長崎のハウステンボスホテルズで働いていたんだね。

田坂:はい。父親の友人の紹介で入社する前に、上柿元シェフの名著『フランス料理のスピリッツ(柴田書店』を読みました。そして数年後、『総料理長の四季(アビーハウス)』で、ムッシュこと上柿元シェフの料理を立木先生が撮影されたのでしたね。じつに綺麗な本で、ぼくは感銘を受けました。今でも大切に持っています。

立木:それはどうもありがとう。

シマジ:田坂さんはどちらの料理学校で学ばれたんですか。

田坂:ぼくはエコールキュリネール国立(現在のエコール辻東京)フランス料理専攻学科を卒業しました。

シマジ:料理学校の”東大”と言われているところですね。あっ、そうそう。こちらは資生堂の川口朋子さんです。

立木:よろしくね。

田坂:よろしくお願いします。

川口:こちらこそよろしくお願いいたします。

田坂:では、川口さんとシマジさんはこちらのテーブルでお待ちください。ぼくはいまから厨房で料理を作ってお持ちします。

シマジ:田坂さん、料理ができ次第、立木先生に写真を撮っていただきます。

田坂:存じ上げております。連載をじっくり読ませていただきました。お二人は白ワインでも飲みながらお待ちください。

立木:厨房に入らせてもらえる? シェフが作っているところも撮影したいね。

田坂:どうぞ、どうぞ。

シマジ:今日はどういう料理が出てくるのか楽しみですね。川口さん、お昼は抜いてきましたよね。

川口:はい。今日は朝トースト1枚食べただけです。

シマジ:早い!もう第1弾がやってきましたよ。

田坂:まず写真を撮るんでしたね。

立木:ここのテーブルでいいよ。どちらが正面なの。

田坂:こちらでお願いします。

シマジ:見るからに美しい盛り付けですね。食べるのがもったいないくらいですね。

立木:うん、アートだね。

シマジ:メイン料理が少し奥に置かれているところに風情を感じます。しかも意表を突かれますね。はじめにデザートが出てきたみたいです。なんですか、これは?

田坂:では料理を説明しますね。このモンブラン仕立てのものは、野生のアスパラ、ルッコラ、セルフィーユ、などなど、季節の産地直送の野菜を盛り込んだものです。モンブラン仕立ての下には、エビとカニが隠されています。モンブランの上にはセルフィーユの根っこをピューレにしたクリームがかかっています。さらにトッピングとして、ビターチョコレートの粉末をかけています。その周りに産直の野菜を色づけに置いてあります。

立木:はい、撮影完成! お嬢の前に持って行ってあげなさい。早く食べたいという顔をしているのが正直でいいね。

川口:立木先生のお仕事は速いと仲間から聞いていましたが、こんなに速いとは驚きです。
うわっ、本当に美しいお料理ですね。ありがとうございます。食べていいんでしょうか。

坂田:どうぞ。ゆっくり召し上がってください。

シマジ:ホントに食べて消えてしまうのがもったいない感じですね。でも川口さん、資生堂の全社員を代表して召し上がってください。

川口:まずはわたしも写真を撮ってもいいですか。あとで仲間に自慢したいので。

シマジ:どうぞ、どうぞ。今日のあなたは資生堂代表ですから構いません。味をしっかり覚えておいて、写真と共にみんなに自慢したり、宣伝したりしてください。田坂シェフも喜びますよ。

川口:友達にヤキモチを焼かれたらどうしましょう。

シマジ:簡単です。ここに一緒に来て、これを注文して食べればいいことです。

立木:シマジのバーの格言コースターに「嫉妬するより嫉妬される人間になれ」ってなかったか。

シマジ:ありますね。自分で作って忘れていました。川口さん、人生は、うらやましがられてなんぼのものですよ。どうぞ、召し上がってください。

川口:はい。いただきます。もったいない気がしますけど、勇気を持っていただきますね。うん、美味しい! 産直の野菜の香りが初夏を感じさせてくれますね。

田坂:では第2弾を作って参りましたので、立木先生、どうぞ。

立木:シェフも仕事が早いね。

田坂:スタッフが下準備をしていますから、ほんの少し調整するだけで完成します。前もっての打ち合わせは大変ですが、それが決まるとあとはチームワークですから。これはフォアグラとタケノコをソテーしたものです。椎茸も入っています。

シマジ:ソテーなんですね。

田坂:でも撮影用には、フォアグラの活き活きしたところを立木先生に撮っていただくために、少ない時間で持ってきています。実際に召し上がっていただくときはもう少しソテーして参ります。

立木:料理の写真映りまで気を遣ってくれてありがとう。

田坂:どういたしまして。せっかくですから、美味しく撮っていただくために、ぼくもなにか協力したいのです。

シマジ:ごめんなさい、川口さん。そんなわけで第2弾のお料理はちょっとお預けです。

川口:大丈夫です。最初のお料理をまだ半分しかいただいていません。

立木:第2弾も撮影終了!

坂田:ではこれは一旦厨房に引き上げますね。第3弾をすぐにお持ちします。

シマジ:第3弾はなんですかね。

川口:楽しみです。

田坂:はい、どうぞ。

立木:これはサーモンだね。

田坂:これは福島県の会津磐梯山の麓で養殖している、メープルサーモンと言われている貴重な食材です。それを特に低温でコンフィしたものです。

立木:こっちが正面かな。

田坂:そうです。

シマジ:まさに、これぞサーモンピンク!という色ですね。

田坂:添えてあるのは、ベークしたトマト、これは高知のフルーツトマトです。それからグリーンアスパラ、ダイコンの花、スナップエンドウ、そら豆です。どうぞ召し上がってください。

立木:撮影終了!

坂田:どうぞ、川口さん。メープルサーモンと、先ほどのフォアグラとタケノコの料理を一緒にお出ししますので、両方召し上がってください。

川口:豪華ですね。嬉しい!

立木:最後のメインディッシュはなんなの?

田坂:はい。すぐお持ちしますが、ニュージーランドの仔羊です。

立木:田坂シェフはきっと絵も上手いんじゃないの。

シマジ:いい質問ですね。訊いてみましょうか。

田坂:お待たせしました。こちらです。

シマジ:田坂シェフの料理は、味もさることながら、盛り付けがじつに美しく、まるでアートですね。きっと絵を描くのもお上手なんでしょう。

田坂:いえいえ、そんなことありません。子どもにドラえもんの絵を描いたら「パパ、なにそれ?」と言われたくらいです。では添えの野菜をご説明します。こちらからツクシ、行者ニンニク、ワラビ、コゴミです。

シマジ:田坂さんは、16年ぶりに輸入が解禁になったとフレンチのシェフたちが騒いでいる、フランスのアニョー・シストロンの仔羊の肉には興味はないんですか。

田坂:ああ、あれですね。そろそろ使おうかなと考えております。

立木:最後の仔羊の撮影も終了!

田坂:川口さん、一挙にテーブルの上に並べますから、どちらから召し上がっても結構ですよ。

川口:いただきまーす! わたし、今日はもう幸せ過ぎます! 明日からどうしましょう。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

ARGO
東京都千代田区麹町1-12 ONE FOUR TWO by tojo 9F
Tel: 03-3265-5504
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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