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第12回 六本木 Restaurant Ryuzu 飯塚隆太氏 第1章 郷里、新潟妻有ポークロティは格別である。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

フランス料理店リューズを知ったのは、ときおり伊勢丹のサロン・ド・シマジにお顔を出してくださる帝国ホテルの専務執行役員総料理長、田中健一郎さんから教えていただいたのが最初のきっかけである。
「田中さんが好んで行かれるフレンチレストランはどちらなんですか」というわたしの質問に、田中総料理長は胸を張ってこう答えたのである。「そうですね。よく通っているフレンチは六本木のリューズですか。あそこの飯塚シェフの料理はたしかです。まだ見習いだったころから知っています。彼の店の雰囲気も抜群です」
さっそくわたしはバトラー・ミズマを伴いリューズを訪ねてみた。「なるぼど、ここは別格のフレンチだね」と感想を述べると、ミズマも目を細めて「料理、ワイン、雰囲気、どれをとっても素晴らしいですね。今度、接待で使わせていただきます」と感心していた。ミズマの平日の顔というのは、丸の内の中心で石炭輸入会社を経営する社長である。全国の大手電力会社はもちろんのこと、数多の鉄鋼会社に石炭を納入しているそうだ。
リューズは接待でもプライベートでも、必ずや期待に応えてくれるであろう名店である。

シマジ:こちらが名にし負う立木義浩先生です。

立木:よろしくね。

飯塚:こちらこそ。今日はよろしくお願いいたします。

シマジ:そしてこちらが資生堂からのゲスト、土屋古都さんです。

土屋:よろしくお願いいたします。

飯塚:こちらこそよろしくお願いします。

シマジ:ではさっそく本論に入りますが、飯塚シェフは帝国ホテルの田中総料理長に認められているんですね。これは凄いことですよ。

飯塚:田中総料理長にはじめてお会いしたのは、わたしがまだ見習いのころでした。田中さんが審査委員をやっていらした料理コンクールで、運良く優勝することができたんですが、光栄なことに、そのころから目をかけていただいております。

シマジ:まさに栴檀は双葉より芳し、ですね。ではそろそろ得意の料理を4品作っていただきましょうか。

土屋:すみません、その前にお願いがあります。飯塚シェフのお肌チェックをはじめにやらせていただけませんか。

シマジ:いいですけど。

土屋:いままでの連載を読んでいますと、資生堂の先輩たちはみんな美味しいものを食べ、ワインを飲んでいるうちに肝心のお肌チェックを忘れてしまい、最後に慌ててやっているようですので、わたしは最初にやらせていただこうかなと、ずっと考えていたんです。よろしいでしょうか。

シマジ:どうぞ、どうぞ。趣向が変わって面白いかもね。

土屋:では飯塚シェフ、こちらにお座りください。生年月日を西暦で教えてください。

飯塚:1968年11月20日です。

土屋:お肌のきめが細かいですね。はい、判定が出ました。お肌年齢は46歳で、判定はDでした。

飯塚:Dというのはどうなんでしょうか。

シマジ:Dはいいですよ。しかも実年齢より3歳も若いお肌です。飯塚シェフは日頃から美味しいものを食べていて、肌にも栄養が行き届いているんでしょう。

土屋:今日お持ちしたSHISEIDO MENをこれから毎朝お使いになれば、CもBも夢ではないですよ。

飯塚:ありがとうございます。さっそく明日から使わせていただきます。でも次からは、どこへ行けば買えるんでしょうか。

シマジ:新宿伊勢丹メンズ館8階のサロン・ド・シマジに来ていただければ売っております。でもまあ3カ月くらいは十分持ちますよ。

飯塚:そうします。一度シマジさんのバーにもお邪魔したいなあと以前から思っていたんです。では、料理を作りましょうか。

シマジ:お願いします。立木先生が厨房に入られても大丈夫ですか。

飯塚:どうぞ、お好きなところから撮影してください。

立木:じゃあ、シマジ、行ってくるよ。おれがそばにいないって寂しがるなよ。

シマジ:アッハハハ。何度聞いてもそのレトリックは笑えますね。

土屋:立木先生とシマジさんは本当に仲がいいんですね。

シマジ:もうかれこれ40年以上の付き合いですから。土屋さんはこちらのテーブルで、ワインを飲みながら料理が出てくるのを待っていてくださいね。

土屋:承知しております。じつはわたしはこの連載の大ファンなんです。もちろん今日はランチを抜いてきています。

シマジ:タッチャンが撮影を終えたら、1品1品ここに運ばれますからね。

土屋:はい、それも存知上げております。

シマジ:今日はどうもやりにくいな。

飯塚:お待たせしました。あっ、そうそう、まず立木先生が写真を撮るんでしたね。

立木:じゃあ、ここに置いてくれる。これはこっちが正面かな。

飯塚:そうです。そちらからお願いします。

立木:はい。お嬢、お待たせ。

土屋:光より速いですね。

シマジ:土屋さんはさすがにこの連載を読み込んでいますね。

土屋:いただきます。

シマジ:その前に飯塚シェフの説明を聞きましょう。

飯塚:これはカリフラワームースです。ムースの下に松葉蟹と干しエビと干し貝柱のジュレが入ってます。

土屋:美味しいです!香りが凄いですね。

飯塚:ありがとうございます。では次の料理を作ってきますね。

立木:この店は天井が高いね。

シマジ:それがウリらしいですよ。

立木:以前はどんな店が入っていたの。

シマジ:先日聞いた話だと、はじめのシャンパンバー、そのあとの中華料理店ともそれぞれ1年で閉めてしまったあと、飯塚シェフがフランス料理をはじめたようですよ。

立木:それで何年続いているの。

シマジ:先日7周年のお花が飾ってありました。

立木:そうなんだ。ここはキッチンの料理人の数もサービスの人の数も多いね。

シマジ:さすがにタッチャンは目の付けどころがいいですね。キッチンに7名、サービスも7名で回しているようです。

飯塚:お待たせしました。2番目の料理です。これはシイタケのタルトです。フレンチでいうラルド(ブタの背脂の塩漬け)を添えて、その下にパイ生地を置いています。

土屋:見た目にも美味しそうですね。

立木:お嬢、まずおじさんが写真を撮ったらそちらに持っていくからね。待っていてね。

土屋:どうぞ、どうぞ。

立木:キャビアも添えているんだね。タカギ、そちらから一発飛ばして欲しいな。

タカギ:かしこまりました。

立木:はい、OK。カリフラワーの撮影は終了。

シマジ:では土屋さん、召し上がれ。

土屋:いただきます。美味しい!ワインが進みますね。

シマジ:ワインのお代わりもどうぞ。

土屋:では同じ白ワインをいただこうかしら。

飯塚:3番目の料理が上がりました。いまが旬のサワラです。魚へんに春と書いてサワラですね。宮崎産です。立木先生、お願いします。

立木:香りがいいね。

シマジ:この香りを撮ってくださいよ。

立木:そんな無茶言うなよ。

飯塚:サワラは水っぽい魚ですが、塩で水気を抜いてから、ビーツのコンディメントで味をつけています。薬味にショウガが入っています。

シマジ:ビーツってボルシチに入っているダイコンみたいなものですか。

飯塚:そうです。ロシア人はビーツが大好物ですね。

立木:サワラの撮影も終了!

シマジ:土屋さん、サワラをここに置きますが、ゆっくり召し上がってくださいね。

飯塚:では最後にわたしの郷里、新潟の妻有(つまり)ポークのロティです。ただローストしただけですが、食材が上等なのでなにも手を加えなくても十分に美味しいんです。

シマジ:妻有ってとどのつまりの妻有ですか。

飯塚:そうです。

立木:これはこっちが正面だよね。

飯塚:そうです。

立木:とどのつまりのツマリポークも撮影終了。あとは3人を撮ろうか。

新刊情報

神々にえこひいきされた男たち
(講談社+α文庫)

著: 島地勝彦
出版: 講談社
価格:1,058円(税込)

今回登場したお店

六本木 Restaurant Ryuzu
東京都港区六本木4-2-35
Tel:03-5770-4236
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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