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第2回 現代ビジネス編集長 瀬尾傑氏 第2章 病室の首相を盗撮。

<店主前曰>

セオは気のせいか、今日はこざっぱりした感じでシマジサロンに現われた。訊くと、セオは2カ月ぶりにバーバーに行ったという。ヒゲもいつもの無精ヒゲではなくちゃんと整っていた。資生堂の野田裕子さんは早くセオから大スクープの話を聞きたくってうずうずしている。タッチャンはまたセオを撮るのかと、いやいや撮影の準備をしていたが、さっぱりしたセオをみて気持ちが変わったようだ。
 わたしにとって講談社のセオ・マサルは息子みたいな存在である。しかも大変な親孝行の息子である。ちょうど4年前になるが、わたしが出版業界をめでたく引退するとき、「遅れてきた新人シマジ君を励ます会」を企画してくれ、自分から幹事をやって、各界のVIPを呼んでくれた。発起人は瀬戸内寂聴さん、塩野七生さん、福原義春さん、成田豊さんだったが、すべてセオが直接連絡して賛同を得てくれた。塩野さんはわざわざローマから駆けつけてくれてスピーチをしてくれた。小沢一郎さんも駆けつけた。もちろん、タッチャンもきてくれた。それからわたしは売文の徒になる宣言をして、多くの人たちの熱い応援歌に背中を押されながら、現在、毎日、書きに書きまくっている。

野田 セオさんの大スクープのお話を早く聞きたくって、1週間が長く感じました。

立木 セオ、もったいぶらないで早くしゃべれよ。

シマジ セオ、なんかおまえ、肌つやがよくなったような気がするね。残念、今日は肌をチェックするマシンは持ってきてもらわなかった。デパートのSHISEIDOの売り場に行けば、どこでもあるからまたチェックしてもらったらいいよ。肌のうるおいが増してるかもしれない。

立木 たしかに肌がいつもみたいにガサガサしていないようだね。

野田 セオさんはあれから、毎朝、SHISEIDO MENをお使いなったんでしょう。

セオ もちろんです。気張って寝る前も野田さんに教えられた通り、「クレンジングフォーム」でしっかり洗顔して、「トーニングローション」「アクティブコンセントレイティッドセラム」「スキンエンパワリングクリーム」そして「アイスーザー」をたっぷりぬって毎晩寝ていました。

立木 よく名前を覚えられたね。

セオ 毎日使ってみていますから、自然と覚えてしまいました。

野田 セオさん、素敵です。見直しました。

シマジ やったね、セオ。

立木 朝も同じようにやったんだろうな。

セオ もちろんです。ぼくはまずカミサンを驚かせたいんです。シマジさんに負けないようなスベスベ、ツルツルの肌になって、カミサンがぼくと歩くとき、カミサンにぼくの肌を自慢させたいんです。

立木 そのときはお手々繋いで歩くんだろう。

シマジ タッチャン、やっかまないの。

野田 早くスクープのお話してください。聞きたいわ。

セオ すごく長くなるけどいいですか。

立木 いいよ。一晩でも話してくれ。

シマジ これは何度聞いても面白い。感動的な話だよ。

セオ みなさん、小渕首相が倒れて順天堂病院に担ぎ込まれたのは覚えているでしょう。

野田 はい、覚えています。

セオ じつはそのとき、全身チューブが入ってスパゲティ状態で病室のベッドに寝かされている小渕首相の写真をバッチリ撮影してうちのFRIDAYに載せたんです。

立木 覚えている。あの凄まじい写真はおまえが撮ったのか。

セオ いいえ、ぼくではないです。まあある人物に撮らせたんです。

立木 それはすごい。撮らせたというのがすごいね。そいつは誰だ?知り合いに順天堂の看護師でもいたのか。大枚積んだのか。

セオ それはお金でできるような大仕事ではありません。

立木 何枚撮ったの。何回シャッター押させたんだ。フラッシュはたいたの。

セオ 2枚ですね。いいえフラッシュは使えませんでした。当時はデジタルカメラではないから現像するまで心配でした。極秘の作戦を立てながら一方では、別働隊に向かいのマンションから望遠レンズで病室の窓を狙わせているんです。その別働隊は病室に出入りする人を撮影していました。でもまだポニーテールのヘアスタイルで見舞いにきた娘の小渕優子の姿をチラッと撮るのが精一杯でした。それでもよくやってくれましたよ。

立木 マンションのベランダを借りるのだって大変だよな。

セオ そうです。見ず知らずのお宅のマンションのインターホーン
をピンポンと鳴らして交渉するんですから。

野田 FRIDAYの編集者って大変なんですね。

セオ みんな猟犬みたいに命がけで働くんです。でも極秘作戦がこんなに上手くやれるとは思いませんでした。まったく運ですね。

立木 その強運を引き寄せたのが、セオ、おまえなんだ。ついていたんだな。

シマジ あの一枚の写真で政府が国民を騙していたことが一瞬にしてバレたんですよ。官房長だった青木幹雄が、病床の小渕首相から「万事よろしく頼む」と任せられたと主張して、自ら首相臨時代理に就任したんだが、あれじゃ首相はしゃべれないのは一目瞭然だよね。

セオ そうですね。青木幹雄が何と言おうと小渕首相は話せるわけがありません。

野田 やっぱり看護師さんを使って撮影なさったのですか。

セオ それは野田さんでも言えません。秘密です。ぼくが墓場まで持って行く数少ない秘密の1つです。

シマジ おれは知ってるよ。でもおれも言わない。いくら裕子ちゃんが美人でもおれは言わない。タッチャンなんか、墓場まで持って行く秘密は数多くあるんだろうね。

立木 シマジには、到底、敵いません。

シマジ 正義の味方のだれかの協力がないかぎり、あの平成の大スクープ写真は世の中に出なかったんだよね。

セオ FRIDAYの発売が金曜日なんですが、木曜日の夕方のテレビニュースで大々的に明日発売のFRIDAYで小渕首相の病床写真が出ますと報じられたんです。これまでの雑誌の世界ではありえないことでした。

立木 それで社長賞かなんかもらったの。

セオ いや、あれは編集者たちが選ぶ雑誌ジャーナリズム賞をいただきました。その年の各雑誌を代表するスクープとして選ばれたんです。それは編集者たちがガチンコで投票して決まる、いわばプロ野球のオールスターみたいに公正に選ばれる賞なんで価値があるんです。寒いなか、別働隊を24時間張らしておいて、こちらでは極秘作戦をやって、結果として1枚の衝撃的な写真が雑誌に載った。やっぱりぼくはそのとき別働隊に申し訳ないなと、忸怩たるものを感じましたね。

シマジ そこがセオのいいところだね。

セオ 別働隊も頑張ってくれたんです。取材はチームで動いていますから、あれはみんなの賞なんです。

シマジ 裕子ちゃんはあの写真をじかにみたの。

セオ ちょうど12年前です。

シマジ 小学生かな。

野田 十分成人してますよ。

シマジ 若い女の子はFRIDAYは読まないか。

野田 表紙が印象的な雑誌でしょう。よく芸能人がフライデイされるなんていいますよね。

シマジ ヌードもあるしね。

セオ 人間はああいう雑誌に悪口を書かれたり、スクープされるとこたえるんですね。むかしぼくは日経ビジネスの編集者だったんですが、ああいう堅い雑誌でいくら旧大蔵省のことを書かれても官僚組織はビクともしなかったんです。当時、大蔵省は金融と財政を分離すべきだと日経ビジネスでいくら論陣を張っても効き目がなかったんです。いいこと書いているね、ぐらいで世の中は変わらなかった。ところがFRIDAYでノーパンしゃぶしゃぶで官僚と銀行がズブズブの関係だとスクープ写真を載せたら、一発で効果があった。いま大蔵省が財務省と金融省に別れたのはあの一枚のFRIDAYの写真が大きな影響を与えたとぼくは自負しています。

シマジ なるほどね。汚いものは汚いもので裁けか。エリートの鼻をへし折るのにはてきめんの効果があるんだ。

立木 セオ、そこで、いい顔して。そうそう。だんだんいい男にみえてきたよ、OK。

セオ 話は少し難しくなりますが、銀行にとっていいことが果たして財政にとっていいことかどうかわからない。たとえば銀行の不良債権問題で、銀行を潰したほうが財政的にみるといいことなんです。それ以上傷口が広がらない。ところが大蔵省の銀行局から銀行に天下りしているから、なかなか銀行は潰せない。その矛盾を日経ビジネスで叩いたんです。いま民主党にいる長妻さんと同僚で大蔵省解体しろってずっと書き続けたんです。

立木 セオはシマジとちがってちゃんとしたジャーナリスティックな編集者だね。

セオ いや、シマジさんの手法も普通の編集者は真似できませんよ。

立木 だってシマジが週刊プレイボーイの編集長になったとき、おれに五月みどりと男性読者が露天風呂に入ってる写真を撮らせるんだぜ。

セオ それも読者サービスとしては普通考えられない名企画ですよ。

立木 それだって、何度もやるんだぜ。

シマジ 売れなくなるとよく載せたよな。あれが週刊プレイボーイを100万部にした原動力の1つだろうね。ところでセオは髪の毛が太くて密集しているから、こういうタイプは頭皮に酸素が送れなくなり、急に禿げる恐れがあるんじゃないですか。裕子ちゃん、どうでしょうか。

野田 そうですね。毎日、「薬用アデノゲンシャンプー」でシャンプーしていただき「薬用アデノゲンコンディショナー」で洗い流したあと、「薬用アデノゲン」のトニックでマッサージすると、いいでしょう。そのあとSHISEIDO MENの「ヘアワックス」で整髪してください。

セオ シマジさんも使ってるんですか。

シマジ そうだよ。だからいまでもこんなにフサフサなんだ。そしてこの「ヘアワックス」で、朝、整髪のときぬってブラシを入れると、寝るまで、このようにきちっとしているスグレモノだよ。ちょうどこれは買ったばかりのセットだが、今日はおまえがいい話をしてくれたからプレゼントしよう。

セオ ありがとうございます。

立木 おれには何かくんないの。

シマジ タッチャンはあとで美味しいシングルモルトを一緒に飲もうよ。

立木 ありがとう。

シマジ 来週はセオが戦火のイラクに突撃取材をしたこれまたすごいスクープ話を聞こうじゃないか。

野田 面白そうですね。また来週が待ち遠しいです。

セオ これまた長くなりますがいいんですか。

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