第12回 新宿 BAR LIVET 静谷和典氏 第3章 えこひいきされる才能の持ち主。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

土屋守編集長が今月創刊したウイスキー専門誌「Whisky Galore(ウイスキーガロア)」(ウイスキー文化研究所刊)で、静谷和典バーマンは、わたしと親しい松木崇ドクターとタッグを組んでいろいろなウイスキーをテイスティングしている。
わたしの好きなグレンファークラスのテイスティングはどのようなものであったのか、ここに彼らのコメントを引用してみよう。

グレンファークラス 1989 26年
静谷 【アロマ】快活で芳ばしさ漂う香り立ち。ミックスベリー、ボデガ。パロ・コロタドの酸味、微かにカベルネのベジタブルやビターフレーバー。加水で乳酸。【フレーバー】芳ばしさと酸味の伴うキリマンジャロ珈琲、噛み砕いたカカオニブ。後からライチ等の南国系フルーツの追随。加水で体幹がぶれる。【総合評価】芳ばしさと、葡萄由来の酸味と、トロピカルのトリニタス。ニートで。93点
松木 【アロマ】深く芳醇。皮ごと絞った巨峰やレーズン、アルマニャック、高級チョコレート。アンティーク家具、レザーやハーブ、複雑。【フレーバー】重層的に広がる。香り同様の多彩なブドウ感とチョコレート、濃いめの甘味に上等なウッディネスと渋み。ブーケガルニ、クローブ、土やレザー、長く心地良い余韻。【総合評価】芳醇で魅力的。現行のシェリー樽に明るい未来を感じた。95点

なるほど。2人ともいい舌と鼻を持っているではないか。これから毎回2人のテイスティング・ページを読むのが愉しみだ。

シマジ:「ウイスキーガロア」が創刊されましたね。ウイスキーファンにとっては愉しい専門誌ですね。

佐藤:「ガロア」ってどういう意味なんですか。

静谷:「ガロア」はゲール語で「たくさんある」という意味の形容詞だそうです。

立木:「ウイスキーがいっぱい」という意味か、いいタイトルだね。

シマジ:洒落ていますよね。ところで佐藤さんはどうして資生堂に入社したいと思ったんですか。

佐藤:高校生のころから美容に携わる仕事に就きたいと考えていて、美容学校の道に進みました。そこから様々なメーカーの化粧品に触れて勉強しましたが、資生堂の化粧品の品質の良さやブランドの多さ、CMや雑誌などの華やかな世界観、そしてやはりビューティーコンサルタント(BC)の親身なカウンセリングに感動したんです。わたしの出身は福岡なんですが、当時、福岡ではデパートBCの募集はしておらず、資生堂のデパートBCを目指すためには、関西か関東しか選択肢がなかったんです。本音を言えば、地元の福岡で就職したかったんですが、資生堂だったらきっと頑張れると決心して東京へやってきました。

シマジ:夢叶って資生堂に入社出来てよかったですね。

佐藤:はい。まずはBCとして横浜の店舗に配属になりました。

シマジ:名刺を拝見すると、いまはプレステージ事業本部マーケティング部に所属しているんですね。

佐藤:はい。資生堂にはジョブチャレンジ(交流制度)というのがありまして、そこに応募して今年の1月からマーケティングを勉強中なんです。

シマジ:へえ、ジョブチャレンジですか。さすがは資生堂です。それはいい制度ですね。眠っている自分の才能が開花するかもしれないですよね。

佐藤:わたしは2016年12月までは店頭でBCの活動をしていたので、約11年間、お客さまにいちばん近いところでいろいろな経験をさせていただきました。そこでいままでにいただいたお客さまの本音や現場の声を活かしつつ、もっとSHISEIDOを広めていきたいと思い、交流制度に手を挙げてマーケティング部に移りました。

シマジ:現在はどういうお仕事をしているんですか。

佐藤:マーケティングについての基礎を学びつつ、イベントの運営や商品PRのアシスタントという形で、現場の空気を感じながら仕事に取り組んでいる最中です。

シマジ:大活躍ではないですか。

佐藤:いいえ、まだまだ活躍しているとは言えません。でも日々新しい発見があります。と同時に失敗もありますので、愉しんだり反省したりの毎日を送っています。

シマジ:佐藤さんは、長年、資生堂の化粧品を直接買ってくださるお客さまとじかあたりしていたのですから、その感覚をマーケティングに活かせれば鬼に金棒ですよ。

佐藤:頑張りたいと思っています。

シマジ:静谷はいま31歳だとすると、3年前にこの「LIVET」をオープンしたときは、28歳でオーナーバーマンになったということだね。

静谷:はい、自分としてはどうしても30歳までに独立したいと考えていましたから、運よく夢が叶えられました。資金は600万円ほど借り入れましたが、お陰さまで2年と僅かで全額返済出来ました。

シマジ:おめでとう!それは凄いことだね。

静谷:内装工事に関してもラッキーでした。3つの会社に見積もりを出してもらったところ、とてもぼくが払える金額ではなかったんですが、知り合いのインテリアデザイナーの方に協力してもらえることになったんです。そして材料の発注など、自分でできることはほとんど自分でやり、工事そのものは300万円以内でやってもらうことができたんです。

シマジ:静谷もえこひいきされる才能の持ち主なんだね。人間は可愛がられるほうが人生を生きて行くのに楽なんだよ。

立木:シマジなんて若いときから「人たらし」で楽をしてきたもんな。

シマジ:わたしのことはさておいて、静谷はウイスキー検定でも凄い成績を残していますね。きっと地頭がいいんだね。

静谷:いえいえ、ただ負けず嫌いなだけです。できがいいのはぼくの兄です。兄は筑波大学の大学院を出て、いまはTDKの研究員をやっています。

シマジ:ほう、それはエリートですね。お兄さんはここに飲みに来ることはあるんですか。

静谷:兄は秋田に住んでいますから、なかなか来られません。でも去年でしたか、梅雨の時期に、あじさいが大好きな母を連れて鎌倉の円覚寺に行こうと兄と相談して、3人で円覚寺に行きました。その帰りに、母と兄がここを見に来てくれました。ぼくとしてはそれがいちばん嬉しかったですね。

シマジ:お兄さんとはいくつ違いなんですか。

静谷:10歳違いです。

シマジ:静谷以上にお母さんもお兄さんも喜んだと想像できますね。まずお母さんがいちばん喜んだでしょうね。息子2人の案内で小旅行ができたのはなによりでしたね。

立木:お父さんはどうしていたの。

静谷:父はちょっと足が弱っているので、田舎で留守番をしていました。

シマジ:ここは年中無休なんですよね。

静谷:わたしは日曜日は休ませてもらっていますが、アシスタントがカウンターに立ってくれています。

シマジ:静谷は四谷三丁目に住んでいると言っていたよね。

静谷:はい。

シマジ:きっと得意の競歩で帰るだろうけど、何分くらいで帰れるの。

静谷:そうですね。15、6分ですか。

立木:さすがに速いね。

静谷:ぼくが帰宅するころは歩道にほとんど人がいませんから、歩きやすいんです。

佐藤:鎌倉の円覚寺へお兄さまと静谷さんでお母さまを案内したというお話、わたしも感動しました。静谷兄弟はお優しいんですね。

静谷:いえいえ、普通でしょう。

シマジ:普通、なんて言うところがまたいいね。

立木:静谷、鎌倉の円覚寺には開高健文豪も眠っているんだよ。なあ、シマジ。

シマジ:そうなんです。わたしは1月末にお参りに行ったばかりです。

立木:なにをお願いしてきたんだ。

シマジ:それは秘密です。

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