1000の真実

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1000の真実

赤ちゃんの肌を知る

肌のケアも「自立」が大切
心とのつながりも忘れずに
第4回 親と子の適切な肌ケアのあり方とは

皮膚の病気と心の関係に着目した「皮膚心身医学」を専門とする、若松町こころとひふクリニックの檜垣祐子院長。敏感肌の人が無意識に行っている間違いケアや、アトピー性皮膚炎が悪化する意外な要因などを、フリーアナウンサーの八塩圭子さんがインタビュー。疾患後の肌を健やかに保つ秘訣を全4回でご紹介します!

子供はストレスを言語化できない 
親がストレスを取り除く心がけを

八塩圭子さん(以下、敬称略):ストレスで無意識に掻いてしまう掻破行動は、子供にもよくあることなのでしょうか。

檜垣祐子さん(以下、敬称略):ありますね。やりたいことが思うようにいかないときについ掻いてしまったり、あるいは2~3歳くらいだと親の関心を引くためにわざと掻いたりするケースもあります。また、弟や妹が生まれて親御さんがそちらにかかりきりになったりすることが掻破行動(掻くこと)のきっかけになる例なども見られます。
 ただ、幼い子供の場合は日記を書くことはできませんし、ストレスによる掻破行動の回数を自分で減らす方向に向かわせるのは当然のことながら難しいですね。

八塩:ではどうすればよいのでしょう。

檜垣:掻くことが「親子のコミュニケーションのきっかけにならないようにする」ことですね。掻かなくても親御さんがその子にちゃんと関心を持ってくれることが、お子さん自身に伝わるような工夫が必要だと思います。
 その方法のひとつとして、子供の得意なこと、好きなことを親子のコミュニケーションのツールとして使うのもよいと思います。

例えば、子供が絵を描くのが得意なら、絵を見せてもらったときに思いきりお母さんが喜んだり、ほめたりしてあげる。すると子供は「お母さんはこれが好きなんだな、こうすると喜んでくれるんだな」ということがわかるので、掻くことで関心を引こうとするのではなく、得意なことをやることに気持ちが向かうようになります。子供自身、ストレスを感じにくくなっていくはずです。

塗り薬を塗ることが
ストレスに感じる場合は?

八塩:アトピー性皮膚炎の場合、塗り薬を塗ること自体が親にとっても子供にとってもストレスになったり、治療の途中でいやになってしまったりすることもありますよね。

檜垣:毎日のことですから、負担に感じることはやはりありますよね。とくに湿疹のできている範囲が広いと薬を塗るのもより大変になります。ただ、そういう状態にあるときは日常生活にも大なり小なり支障をきたしていると思いますので、ここであきらめずに治療に専念することがやはり大切なのです。

 塗り薬を適切に使えば湿疹の範囲は徐々に減ってきます。よくなってきていることが実感できるとやりがいが出てきますし、湿疹の範囲が少なくなるほど薬を塗るのも楽になります。
そうしたやりがいや意欲をいかに引き出すか、というのが私たち医師の役目のひとつだと考えています。

八塩:そういうふうにお医者さんに言っていただけるのはとても頼もしく感じます。
 それでもやはり、どうしても途中で治療を続けられなくなってしまうといった相談もあったりするのでしょうか。

檜垣:診察のときに患者さんの肌を見ると、薬を十分塗れているかいないかということはだいたいわかります。ただ、きちんと塗れていなかったときには、家族のケアが大変だった、仕事が忙しくて余裕がなかったなど何らかの事情があるものです。
ですので、まずご自分がゆっくり睡眠や休息をとって、エネルギーを充電するようお話しします。そこからまた治療を再開すればよいのです。

八塩:続けられない自分を責めてしまいがちですから、そういうふうに言っていただけるとうれしいですね。ゆっくり眠りたいですもの(笑)。
 ところで子供の場合も、治療が終わった後の肌には保湿が必要だと思うのですが、小学生くらいの子供に自分で塗る習慣をつけてもらうにはどうしたらよいのでしょうか。ちなみにうちの子の場合はどんなに塗りなさいと言っても塗らないんですよね……。

子供が自分自身で
ケアできるようにするためには?

檜垣:慣れるまでは目の前で塗ってもらって、「上手に塗れたね」とその都度ほめるようにするといいですね。手の届きにくい背中などは手伝ってあげるなど一緒にケアする形から始めて、少しずつ自分ひとりでケアできるように導きましょう。
 心にとめておいていただきたいのは、「指示」より「支持」ということ。オーダーよりもサポートすることを心がけましょう。「塗りなさい」とか「やらなきゃダメでしょ」といった指示を出されると、子供は進んでやりたがりませんよね。

八塩:まったくそのとおりです(笑)。

檜垣:「ここがかゆいんだね、一緒に塗ろうね」と親御さんに言ってもらえたら、子供はきっとうれしいはず。大好きなお母さんにかまってもらえる時間も増えますからね。毎日だとちょっと億劫なスキンケアも、親子の大切なスキンシップの時間だととらえれば、気持ちも変わってくるのではないでしょうか。

 とはいえ、子育てはただでさえ大変なものなのに、子供の肌の状態が敏感だったり、カサカサしていたりするとなおさら大変さが増しますよね。親御さんが子供の肌のケアをしてあげるということを考えると、なるべく簡単に使えるアイテムを選ぶことをお勧めしたいです。例えばスプレータイプのローションなどは手早く使えるので重宝するかもしれません。

八塩:我が家の場合、「子供にローションを塗っておいてね」と夫に頼むと、「どうしてそんなものが子供に必要なんだ」と言われてしまったりするんです。子供には保湿ケアは必要ないと思っている人も実は多いのかなと思うのですが、いかがでしょう。

檜垣:子供には保湿ケアは必要ない、というのは誤った認識ですから、それは正すべきですね。年齢や性別に関わらす、肌が乾燥しやすかったり、敏感な状態になりやすいなら、保湿は健康を保つために必要なものなのです。
 ただ、やはり子供が小学生以上になったら自分でケアできるようにサポートするのが理想的ですね。自分のケアとして子供が保湿ケアを習慣にしてくれたら、結果的に家族みんなが楽になると思います。

八塩:子供の肌ケアも自立に向かうべきなのですね。
 これまで先生のお話を伺ってきて、肌のケアと子育てって似ているな、とちょっと思いました。甘やかしすぎはよくないけれど、どうしていきたいのかというしっかりした軸がなくてもうまくいかないというところが。

経験のファイルを増やして
肌状態に応じた適切な対処を

檜垣:「いたわる」「おまかせする」「ほめる」。この3つは「肌のケア」にも「子育て」にも共通するキーワードですね。

八塩:自分の肌も、調子がよいときはほめたほうがいいのですね。

檜垣:もちろんです。「自分の肌はまだまだ」などと謙遜しても肌にとっても自分にとってもよいことは何もありません。どんどんほめて、自信をつけましょう。
 そして肌ケアにおける「自立」とは、自分にとってベストなケア法やアイテムを自分自身で選べることなのだということをぜひ覚えておいてほしいです。
 そのためにも、この化粧品でこういうケアをしたときに肌の状態がどうなった、といった経験のファイルをぜひ増やしてください。

八塩:自分で自分の肌のデータを収集するわけですね。

檜垣:経験のファイルが多いと、肌にトラブルが起きたときにはこれを使えばいい、こういうケアをすればいい、ということが自分で判断できるようになります。
 また、症状があるときも、塗り薬をどの部位に何日間塗布してその結果どうなった、といったことを医師と話し合うことができると、その方法が適切だったのか、あるいは何か問題があったのかといったことをより検討しやすくなります。そこで適切だったということがわかればまた経験のファイルが増えて、同じ症状が生じたときにスムーズに対処できるのです。

八塩:自分の掻破行動について記録する日記もそうですが、自分が自分の肌に対していつも行っていることを自覚して、それによって肌の状態がどう変化しているかということを把握することがとても大切なのですね。

檜垣:先にもお話ししましたとおり、肌は自分自身ですから。ケアをすることが目的ではなく、ケアをして肌状態がよくなることで活動範囲が広がり、充実した社会生活を送れるようになることが大切です。そこを目指してケアに取り組んでいっていただきたいですね。

八塩:肌のケアが上手にできると心も元気になって、人生ももっとよい方向に開けてくるのかもしれない……。先生のお話を伺って、そんな希望が湧いてきました。
 本日はどうもありがとうございました。

profile

八塩 圭子

フリーアナウンサー/東洋学園大学商学部准教授

1993年、テレビ東京入社。報道局経済部で記者を務めた後、同局アナウンス室に異動。2002年より法政ビジネススクールでマーケティングを専攻し、2004年に修了(MBA取得)。2003年、同局を退職しフリーアナウンサーとして活動を開始。テレビ、ラジオ出演の一方で、2006年から関西学院商学部准教授。その後、2009年から学習院大学経済学部経営学科特別客員教授としてアカデミックな分野でも活躍。

檜垣 祐子

若松町こころとひふのクリニック院長

医学博士。皮膚科専門医。1982年、東京女子医科大学卒業後、東京女子医科大学皮膚科に研修医として入室。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。スイス ジュネーブ大学皮膚科および免疫病理学教室留学、東京女子医科大学皮膚科助教授、東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授(皮膚科兼務)などを経て現職。主な著書に『もっとよくなるアトピー性皮膚炎』(南山堂)、『皮膚科専門医が教える やってはいけないスキンケア』(草思社)などがある。

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