1000の真実

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1000の真実

ケア方法を知る

肌のケアも「自立」が大切
心とのつながりも忘れずに
第1回 敏感肌とアトピー性皮膚炎の違いとは

皮膚の病気と心の関係に着目した「皮膚心身医学」を専門とする、若松町こころとひふクリニックの檜垣祐子院長。敏感肌の人が無意識に行っている間違いケアや、アトピー性皮膚炎が悪化する意外な要因などについて、フリーアナウンサーの八塩圭子さんがインタビュー。疾患後の肌を健やかに保つ秘訣を全4回でご紹介します!

アトピー性皮膚炎は「病気」、
敏感肌は「症状」という違いが

八塩圭子さん(以下、敬称略):年齢や性別を問わず、洗いすぎや肌の弱さからくるトラブルを抱えている人が今とても多いように感じます。私の7歳の息子も、寒い時期は乾燥によって、暑い時期は汗によって肌がものすごく荒れてしまうんです。かかりつけの皮膚科の先生には「ややアトピー気味の敏感肌」といわれているのですが、アトピー性皮膚炎と敏感肌にはどのような違いがあるのでしょうか。

檜垣祐子さん(以下、敬称略):大きな違いとして、アトピー性皮膚炎は肌の「病気」、敏感肌は病気ではなくひとつの「症状」ということが挙げられます。
 アトピー性皮膚炎について少し詳しくお話ししますと、日本皮膚科学会のガイドラインで、「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そうようのある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。

 アトピー素因は主に2つあり、1つは「気管支喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎など、アレルギー性の病気に本人または家族がかかったことがある」というもの。もう1つは「免疫に関係するたんぱく質の1種、IgE抗体を産生しやすい体質である」ということです。
そうした遺伝的、体質的な素因がもともとあるうえに、食物や花粉、ほこり、ダニなどアレルギーの原因物質が加わるとアレルギー反応がより起こりやすくなります。あるいは汗や衣服のこすれ、かゆいところを掻くなどの肌への刺激がきっかけとなって炎症を引き起こすこともあります。その結果、強いかゆみを伴う湿疹が生じ、しかも長期間にわたって続くのがアトピー性皮膚炎の特徴です。
一方、敏感肌は「〇〇皮膚炎」といった病名はつかないものの、突然化粧品がしみるようになったり、肌がカサカサして荒れたりするなど、不快な症状が続くという特徴があります。トラブルのない健康な肌と、湿疹やかゆみのある病的な肌との中間くらいの位置づけといえるかもしれません。

敏感肌の人は自ら肌の
バリア機能を壊している!?

八塩:ひと口に敏感肌といっても、「今まで使っていた化粧品がちょっと肌に合わなくなってきた」という人や「肌が非常に過敏になっていて、使える化粧品が見つからない」という人などいろいろなケースがありますよね。うちの子のような「ややアトピー気味の敏感肌」というケースもありますし……。

檜垣:八塩さんのお子さんはアトピックスキン(アトピー皮膚)に近いのかもしれませんね。アトピックスキンの人は、冬になるとよりいっそう乾燥して肌がカサカサ、ザラザラした状態になったり、粉を吹いたりしやすいんです。掻くと肌が白くなる例もよく見られます。

八塩:わあ、全部当てはまります! どうしてそういうことになってしまうのでしょうか。

檜垣:アトピー性皮膚炎、敏感肌、アトピックスキン、すべてに共通するのが肌のバリア機能(※)の低下です。
※バリア機能の仕組みはリンク先の記事をご参照ください
肌や化粧品の理解を深めて家族のすこやかな肌を守りたい!(前編)
 バリア機能とは、肌の一番外側にある角層に備わっているとても重要な働きのこと。外からの異物の侵入を防ぎ、体内の水分が蒸発しないように強力にブロックしてくれています。
 角層の厚さはごくごく薄いラップ程度しかありませんが、その中にある細胞と細胞の間を細胞間脂質という脂質がきっちり埋めることでバリアが形成されているのです。
 この細胞間脂質が、アトピー性皮膚炎のある肌では減少していることがわかっています(*1)
*1 Imokawa G et al.,J Invest Dermatol 1991;96:523-526
 また、角層の中の水分を保持する役割をもつ天然保湿因子(NMF)もバリア機能を維持するうえで欠かせない成分ですが、この天然保湿因子のもととなる「フィラグリン」が、アトピー性皮膚炎の肌では遺伝的に少ないことも近年の研究でわかっています(*2)。
*2  Osawa R et al.,J Invest Dermatol 2010;130:2834-2836
 もちろん、すべてのアトピー性皮膚炎の人に同じことが当てはまるわけではありませんが、もともとバリア機能の働きが弱い傾向にあるということはいえるかもしれません。
一方で、敏感肌の人は自らバリア機能を低下させてしまっている場合も実は少なくないのです。

八塩:えっ、それはどういうことでしょうか。

洗いすぎ、こすりすぎ、
保湿しすぎの「3すぎ」に要注意

檜垣:敏感肌や乾燥肌、吹き出物などの肌トラブルを抱える患者さんを診察していると、洗顔のときに洗いすぎたり、こすりすぎたりしている人がとても多いのです。

皮脂や汚れを落としたいという気持ちからだと思いますが、角層は皮脂と力を合わせて強力なバリアを作っています。洗浄力の強い洗顔料などでごしごしこすり洗いをすると、肌に必要な皮脂や、まだ剥がれ落ちなくてもいい角層まで無理やり取り去ってしまうことになります。結果、バリアの構造が壊れてしまって、肌のうるおいを保つことができなくなってしまうのですね。

八塩:汚れをしっかり落としたい一心で、知らず知らずのうちについ力が入りすぎてしまっているわけですね……。

檜垣:また、保湿しすぎの人も多いですね。肌が適度な水分を保持していることはバリア機能をしっかり働かせるために大切ですが、だからといってやみくもにあれこれもと化粧品を塗り重ねれば水分を保てるというものでもありません。
肌の毛穴には表皮ブドウ菌やアクネ菌、真菌といった常在菌が存在しています。こうした菌は増えすぎると肌に悪さをしますが、健康な肌では菌のバランスが保たれていてトラブルは起こりません。しかし、油分の多い化粧品や皮脂に近い美容成分などをたっぷり肌に与えると、それらの成分の一部がこうした常在菌の“えさ”になってしまう場合があります。すると菌が増えてバランスが崩れ、赤みやニキビのようなブツブツが生じる酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)など炎症を引き起こす要因になります。
洗いすぎ、こすりすぎ、保湿しすぎの「3すぎ」が、肌を過敏な状態にしたり、トラブルを招いたりする原因になっていることは、患者さんを診ていると本当に多いですよ。

八塩:「3すぎ」ですか! 覚えやすいですね。肌には本来、とても優れた機能が備わっているのに、手をかけすぎることでそれを生かせなくなってしまうのですね。

肌のもつ“自活力”を
信頼してまかせる気持ちも大切

檜垣:そうなのです。肌は本来とてもハイスペックで機能性が高いもの。自らうるおい、古い細胞を捨て去り、新しい細胞を育てる“自活力”があるのですが、多くの人がそのことを知らず、必要以上にスキンケアに力を入れてしまっているのですね。
 もっと自分の肌を信頼して、肌自身に“おまかせ”するという意識をもって日々のケアに取り組んだほうが、結果的に肌をよい状態に保つことができるようになると思います。

八塩:ただ、今の時代はスキンケアひとつとってもさまざまな情報を簡単に入手できるので、かえって迷って試行錯誤を繰り返している人も多いのかもしれませんね。「1000の真実」のアンケート結果でも、情報がありすぎて何を信じたらいいのかわからないという声が多く、自分のケアの方法などに不安を感じている様子が見受けられます。
 化粧品の成分などはやはりきちんとチェックしたほうがよいのですよね?

檜垣:自分の肌にアレルギーを起こす成分がわかっている場合はもちろんチェックするべきです。ただ、成分のことばかり気にしていると、先ほどの「3すぎ」のようなケアの誤りには意識が向かわなくなることもあります。そうすると、「肌のトラブルが改善しないのは化粧品のせいだ」という発想に陥りやすくなってしまうのです。

八塩:根本的な原因は自分の肌のバリア機能が低下して敏感になっていることにあるのに、そこはスルーしてしまうわけですね。

檜垣:肌のトラブルは、普段のケアや生活スタイルを見直すチャンスでもあるのです。自分の肌を健やかに保つためにはどうすればよいのか、自分の中にしっかりとした軸ができれば、情報も上手に取捨選択できるようになるもの。そうした「自立」を肌においても目指していただけたらと思います。

八塩:肌にも「自立」が必要なんて、目からうろこです! 具体的なケアなどについても引き続き教えてください。

profile

八塩 圭子

フリーアナウンサー/東洋学園大学商学部准教授

1993年、テレビ東京入社。報道局経済部で記者を務めた後、同局アナウンス室に異動。2002年より法政ビジネススクールでマーケティングを専攻し、2004年に修了(MBA取得)。2003年、同局を退職しフリーアナウンサーとして活動を開始。テレビ、ラジオ出演の一方で、2006年から関西学院商学部准教授。その後、2009年から学習院大学経済学部経営学科特別客員教授としてアカデミックな分野でも活躍。

檜垣 祐子

若松町こころとひふのクリニック院長

医学博士。皮膚科専門医。1982年、東京女子医科大学卒業後、東京女子医科大学皮膚科に研修医として入室。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。スイス ジュネーブ大学皮膚科および免疫病理学教室留学、東京女子医科大学皮膚科助教授、東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授(皮膚科兼務)などを経て現職。主な著書に『もっとよくなるアトピー性皮膚炎』(南山堂)、『皮膚科専門医が教える やってはいけないスキンケア』(草思社)などがある。

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