1000の真実

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1000の真実

ケア方法を知る

肌のケアも「自立」が大切
心とのつながりも忘れずに
第2回 「3すぎ」にならない適切なケアとは

皮膚の病気と心の関係に着目した「皮膚心身医学」を専門とする、若松町こころとひふクリニックの檜垣祐子院長。敏感肌の人が無意識に行っている間違いケアや、アトピー性皮膚炎が悪化する意外な要因などを、フリーアナウンサーの八塩圭子さんがインタビュー。疾患後の肌を健やかに保つ秘訣を全4回でご紹介します!

洗顔はお豆腐をつぶさない
くらいの力加減がベスト

八塩圭子さん(以下、敬称略):洗いすぎ、こすりすぎ、保湿しすぎの「3すぎ」が敏感肌など肌トラブルの原因になるというお話がありましたが、「3すぎ」にならないようにするためにはどのような方法でケアを行うとよいのでしょうか。

檜垣祐子さん(以下、敬称略):洗顔のときの洗いすぎ、こすりすぎを防ぐためには、まず洗顔料の選び方がポイントになります。私がお勧めしているのは、「泡立ちのよいもの」。泡と肌の接触面積が広くなることで、肌表面の細かい凹凸の毛穴まで洗顔料が行き届きやすくなります。
 きめ細かい弾力のある泡をクッションにして、指が直接肌に触れないよう手を動かすこともこすりすぎを防ぐコツ。お豆腐の表面をつぶさないようになでるイメージで洗うと、必要以上に力が入らなくなります。

八塩:えーっ、お豆腐ですか! ちょっと力を入れたらすぐにつぶれちゃいますね(笑)。それほどやさしい力でも汚れは落とせるなんて驚きです。

檜垣:そっと泡でなでるだけで肌の上にのった汚れは落とせます。力が入りすぎると、バリア機能を壊す原因になるので気をつけてほしいですね。
 洗顔後のすすぎも、泡が残ってはいけないと思って何十回もすすぐ人がいますが、すすぎ終えた後に鏡を見て、顔が赤くなっているようならやりすぎです。すすぎの回数は10回程度を目安にしましょう。すすぎのお湯は肌と同じくらいの37~38℃前後のぬるま湯あるいは水を使うと、皮脂の落としすぎを防ぐことができます。
 メイク落としの際も、クレンジング剤を肌につけてから洗い流すまで1~2分程度で済ませることが、肌に負担をかけない秘訣です。
また、朝は洗顔料を使わず、ぬるま湯で洗うだけでも十分ですよ。

ウォータープルーフタイプの日焼け止めは
無理に落とそうとしなくてOK

八塩:そうなのですね。肌のためには紫外線対策も重要だといわれていますが、ウォータープルーフタイプの日焼け止めを塗ると、通常の洗顔だけでは落ちにくいといつも感じます。それでもやはりやさしく洗うことが大切なのですか?

檜垣:落ちにくいからといって頑張って落とそうとすると、どうしてもこすることになってしまいます。肌が弱い人はとくに、日焼け止めは石けんで落としやすいタイプを選ぶといいですね。
 ただ、ウォータープルーフタイプの日焼け止めやメイクが落としきれずに多少肌に残ってしまうことと、頑張って落とそうとして洗いすぎやこすりすぎになってしまうこと、どちらが肌への負担が大きいかというと、断然後者です。それほど、こすりすぎは肌への負担になるのです。
 そもそも肌に残ったままにしておくとトラブルの原因になるようなものなら、日中、長時間肌の上にのせておくのも本当はよくないはずですよね。

保湿しすぎ防止の一歩は
使うアイテムを厳選すること

八塩:いわれてみると確かにそうですね。
 それにしても洗いすぎ、こすりすぎがそこまで肌にとってよくないものだということは今まで意識したことがありませんでした。とにかく肌に残さないよう、落としきることが肌のためには重要だと思い込んでいましたので。
 洗顔後は肌が乾かないように化粧水や乳液などを塗りますけど、保湿しすぎはどのようにすると防げますか。

檜垣:使うアイテムをできるだけシンプルにすることが基本ですね。例えば、美容液を塗るだけで肌が乾燥しないなと感じられるようなら、しばらくはその1アイテムだけで保湿をするようにします。そのうち季節が変わるなどして乾燥が気になるようになってきたら、クリームをプラスするなど、段階的に1品ずつアイテムを増やしていくのがお勧めです。
 というのも、一度に複数のアイテムを使うと、肌の状態が悪くなったときに原因がわかりにくくなってしまうのですね。また、何品も塗り重ねることで保湿のしすぎにもなりやすいので、その点でもまずは1アイテムから始めるのが最適です。

八塩:まず化粧水など水分の多いものからなじませて、その後に美容液や乳液、クリームなど油分の多いものを重ねていく、といった保湿ケアの方法がよく知られていますが、敏感肌の場合は必ずしもそうする必要はない、むしろシンプルなほうがよいということなのですね。
 アトピー性皮膚炎の症状がある場合も、こうしたケアは行ったほうがよいのでしょうか。

アトピー性皮膚炎の症状がある場合は
炎症を鎮める治療を最優先して

檜垣:炎症を起こしていて、かゆみや湿疹などの症状が出ているときは、外用剤による薬物療法で炎症を鎮めることが先決です。
 しかし肌そのものが乾燥している状態でもあるので、薬物療法と並行して、症状が出ていない部位には、保湿剤を塗布するなどのスキンケアも行うとよいでしょう。あるいは症状が落ち着いてきてからスキンケアに取り組み始めても構いません。
 症状が出ていない部位にスキンケアを行う場合は、炎症を悪化させないことが第一。皮膚科医が勧める刺激の少ない製品を使うことが大切です。その人の肌に合う保湿剤を見極めるのは、医師にとっても試行錯誤を要するところ。同じ人でも肌の部位によって刺激の表れ方が違ったりするので、その都度、適切な製品を検討しています。

八塩:洗いすぎ、こすりすぎは、症状がある場合ももちろん厳禁ですよね。

檜垣:そのとおりです。症状があるときは、からだ全体を洗浄剤で洗うのは週に2日程度にするよう勧めています。それ以外の日はわきや股など汚れやすい部分のみ洗浄剤を使って、ほかの部分は素洗いすればOK。ただし、これはあくまでもひとつの目安なので、患者さんには自分のかゆみの表れ方などに応じて洗う回数を調整しましょうと指導しています。

肌にやさしい紫外線対策や
症状後の化粧品の選び方のポイントは?

八塩:先ほど日焼け止めの話が出ましたが、症状が出ているときも紫外線対策はしたほうがよいのですか?

檜垣:基本的にはしたほうがいいです。ただし、ジクジクするなど皮膚に症状が出ていて炎症を起こしている部分には日焼け止めを塗るのは避けましょう。紫外線防御イコール日焼け止めを塗るということとは限りません。紫外線は、帽子や日傘などで物理的にカットすることができるもの。日焼け止めが使えないときは、こうしたアイテムを上手に活用するとよいですね。

八塩:症状が治って「寛解」といわれる状態になったら、どのようなスキンケア製品を選んで使うとよいでしょうか。

檜垣:まず「敏感肌用」とうたわれている低刺激処方のスキンケア製品から試していくと安心ですね。無香料、無着色、防腐剤(パラベン)やアルコール、鉱物油無添加といったことに加え、アレルギーテストや敏感肌の人の協力を得てパッチテストが行われているものなどを選ぶとよいと思います。

1週間単位で生活習慣を
整える工夫も肌のために大切

八塩:1回目の記事で「肌のトラブルは普段のケアや生活スタイルを見直すチャンスでもある」とおっしゃっていましたが、生活習慣も肌の状態に影響しているのでしょうか。

檜垣:肌を健やかな状態に保つには、肌がもともともっている機能を妨げず、存分に生かすことが重要です。そのためにはからだそのものが健康であることが条件のひとつ。健康の基本は十分な睡眠や休息、栄養バランスのとれた食事、適度な運動といった生活習慣にあります。
 そのうえで、洗浄と適度な保湿、紫外線防御という3つのケアを行う。これが敏感肌や症状後の肌をよりよい状態に導くための軸になる考え方です。

八塩:夜更かしや栄養の偏った食生活は肌にもからだにも悪いということはわかっているけれど、よい生活習慣を続けることがなかなかできないという人は多いかもしれません。

檜垣:そうなのですよね。実際、忙しい毎日の中でコンスタントに早寝早起きをしたり、栄養バランスを考えた食事を3食とったりすることは難しいものだと思います。
 そこで患者さんに提案しているのが、1日単位ではなく1週間単位で調整する方法です。1週間のうち2~3日、食事の内容が偏ったり、寝不足になったりすることがあっても、残りの4~5日くらいでバランスをとることができればOK。

 一時的に生活が乱れたとしても、健康的なベースラインにすぐに戻ってくることができるようになれば、肌も健やかな状態を保ちやすくなります。

八塩:なるほど、そういう柔軟な考え方を身につけると続けやすそうですね。

檜垣:この方法を続けることで、例えば睡眠不足が解消できたといった手ごたえを得られると、それに連動してほかの生活習慣も健康的な方向に向かうようになります。すると肌の調子もよくなる、イライラすることがなくなって人間関係もよくなるなど、いろいろな相乗効果を得られるようになるのです。

八塩:素晴らしいですね!

profile

八塩 圭子

フリーアナウンサー/東洋学園大学商学部准教授

1993年、テレビ東京入社。報道局経済部で記者を務めた後、同局アナウンス室に異動。2002年より法政ビジネススクールでマーケティングを専攻し、2004年に修了(MBA取得)。2003年、同局を退職しフリーアナウンサーとして活動を開始。テレビ、ラジオ出演の一方で、2006年から関西学院商学部准教授。その後、2009年から学習院大学経済学部経営学科特別客員教授としてアカデミックな分野でも活躍。

檜垣 祐子

若松町こころとひふのクリニック院長

医学博士。皮膚科専門医。1982年、東京女子医科大学卒業後、東京女子医科大学皮膚科に研修医として入室。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。スイス ジュネーブ大学皮膚科および免疫病理学教室留学、東京女子医科大学皮膚科助教授、東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授(皮膚科兼務)などを経て現職。主な著書に『もっとよくなるアトピー性皮膚炎』(南山堂)、『皮膚科専門医が教える やってはいけないスキンケア』(草思社)などがある。

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