1000の真実

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1000の真実

ケア方法を知る

敏感肌にとって最適なスキンケア商品の選び方、
最低限行うべきケア法とは?<後編>

できるだけ肌に刺激が少なく、保湿効果の高いスキンケア商品を選ぶようにしている、という敏感肌の人は多いでしょう。とはいえ、それだけを重視していればいいというわけではありません。すこやかな肌を保つために必要なスキンケア商品の選び方や正しいケアのポイントについて、スキンケア製品の安全性にも詳しい藤田医科大学医学部アレルギー疾患対策講座の松永佳世子教授に教えていただきました。

赤ちゃんと40代以降の男女は
夏も保湿をしっかり

 前編では、敏感肌のためのスキンケア商品選びの条件と、3つの重要なケア法のうち、「洗浄」についてお話ししました。2つ目は「保湿」です。 保湿剤は、洗浄してきれいになった肌に塗ります。性別や年齢に関わらず保湿ケアは重要ですが、とくに角層も表皮も薄い赤ちゃんは肌内部の水分を蓄える“タンク”の容量がそもそも少ないため、乾燥しやすい傾向にあります。肌の外から油分などでしっかり覆うことで乳児湿疹の予防につながるのはもちろん、近年ではアトピー性皮膚炎発症のリスクを低下させることもわかっています。

 また、40代以降になると男女ともに角層が薄くなり、水分を保つ機能が低下していきます。そのため、特に40代を過ぎたら冬だけでなく、夏も含めて一年を通してきちんと保湿ケアを行ってください。

アトピー性皮膚炎の再発予防にも
保湿はとても重要

 アトピー性皮膚炎などで湿疹やかゆみなどの症状がある場合は、ステロイド外用薬などで炎症を抑える治療が必要になります。治療を行う場合も、併せてきちんと保湿ケアを行うことで、より薬の効果がスムーズに表れやすくなるといった効果が期待できます。
 なお、アトピー性皮膚炎は「再発を繰り返しやすい」という傾向があります。その原因のひとつに、発症する人の肌は「湿度の変化に対する調節力が弱い」という特徴があります。アトピー性皮膚炎になりやすい人の肌は湿度に対する調節の幅が狭い傾向にあり、湿度の高い梅雨の時期や反対に湿度が低い冬場など、どちらの場合も肌の調子が悪くなりやすいのです。

 とくに冬場は空気の乾燥のほか、暖房などでも湿度が低くなりがち。一般的に湿度が40%以下になると肌質に関わらず乾燥しやすくなりますが、アトピー性皮膚炎になりやすい人の肌はさらに乾燥が進みやすく、カサつきやかゆみを感じやすくなるのです。加湿器などで室内の湿度を上げることも大切ですが、より早く乾燥を防ぐためには肌をしっかり保湿することが効果的。再発を防ぐためにも、保湿は怠らないでくださいね。

人生100年時代の肌を守るには
紫外線対策も必須!

 朝は保湿ケアの後に、日やけ止めを塗る習慣をつけましょう。大量の紫外線は、アトピーなどの疾患がある肌にとっても、今現在とくに問題のない肌にとっても「光老化」と呼ばれるシミやシワ、たるみなどの症状を将来的にもたらす大きな要因となります。
 人生100年時代、健康な体を維持していくためには、外界から体を守る最前線で働く肌を若々しくすこやかに保つことは、極めて重要です。そのためにも紫外線によるダメージを防ぐことは欠かせません。
 なお、日やけ止めに含まれる紫外線吸収剤が肌に合わない人もいるので、その場合は紫外線吸収剤を含まないノンケミカルタイプを選ぶとよいでしょう。

化粧品による肌の健康被害を
最小限に食い止めるために

 バリア機能が低下している乾燥肌や敏感肌は、外部からの刺激を受けやすい状態にあるため、冒頭に挙げた「肌に合ったスキンケア商品」を選ぶことがより重要です。
 しかし、もともととくに肌に問題のなかった人が、化粧品によってアレルギーを起こす場合はあります。2011年には加水分解小麦末を含有する石けんで経皮感作を起こした人が、それを知らずにパンや麺などの小麦を含む食品を食べて食物アレルギーを発症する例が多発しました。また2013年には、化粧品に配合されていた美白剤のロドデノールという成分による誘発性脱色素斑が多数発生。いずれも大きな社会問題となりました。

※経皮感作についてはこちらのページをご参照ください。

 そこで、こうした化粧品による肌の健康被害を最小限に抑えることを目的に、2016年に「SSCI-Net(=Skin Safety Case Information Network:皮膚安全性症例情報ネット)」を設立しました。
 医療現場で肌の健康被害の症例などが見られた場合には迅速に医師から情報を収集し、医師同士で共有します。さらにその情報を企業と行政などに提供。産学官連携で情報を共有し、活用する仕組みを持つことで、早く問題を見つけて改良するなどの対策が打てます。過去に起きた健康被害を二度と繰り返さないためには、こうした情報を蓄積し、共有して更新し、語り継ぐ活動を持続していくことがとても重要です。「より安全で安心な国」にするためにも必要な活動です。

 敏感肌用のスキンケア商品の近年の進歩は目覚ましいものがあり、安全性も機能性も高くなってきていると感じますが、より多くの人が安心して使えるようになるためには、化粧品メーカー各社の安全性の評価方法の精度などがさらに上がることが期待されます。
 また、医師も自分自身で使ってみて、安全性や効果、使用感を評価することが不可欠でしょう。そうした医師の声も反映されるようになれば、肌トラブルに悩む患者さんにとっても、より安全にセルフケアを行いやすい時代が来るはずです。

profile

松永 佳世子

藤田医科大学医学部 
アレルギー疾患対策講座教授

医師/医学博士。一般社団法人SSCI-Net(皮膚安全性症例情報ネット)理事長。1976年、名古屋大学医学部卒業。同大学医学部附属病院皮膚科、名古屋保健衛生大学皮膚科、名古屋大学附属病院分院皮膚科、藤田医科大学(旧称:藤田保健衛生大学)病院副院長、同大学副学長などを経て、2016年より現職。アレルギー疾患の原因アレルゲン解明、診断・病態把握のための検査法開発、治療方法・発症予防に関する研究と、皮膚安全性症例情報を収集し社会に生かす活動を推進している。

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