皮ふ科医に聞く ミニ知識
乾燥やシミ・そばかす、ニキビあと… 肌に関するお悩みはさまざま。気になる紫外線や、アンチエイジング対策など、ふだんの生活でできるスキンケアや肌トラブルへの心がまえについて、第一線でご活躍中の皮ふ科の先生にお聞きしました。

ニオイ対策

発汗のメカニズム

汗の原料は、血管の中を流れる血液です。もちろん、血液そのものが汗として排泄されているわけではありません。血液は、赤血球などの血球と、それ以外の血漿に分けられます。そして血漿には、ナトリウム、カリウムなどのミネラルや、アンモニアなどの代謝物が含まれています。汗腺は、血管から血漿を汲み取りますが、ほとんどのミネラルを再び血管に戻し(=汗腺の再吸収)、残りの成分を汗として体外に排出します。
汗腺には、全身に分布するエクリン腺と、わきの下など特定の有毛部位にあるアポクリン腺があります。エクリン腺からの発汗は、体温調節に関係しています。この汗腺から分泌される汗は大部分が水分で、無色透明です。一方、アポクリン腺から分泌される汗には、脂質などさまざまな成分が含まれています。

汗が臭くなる原因

エクリン腺から分泌される汗は本来、分泌直後は無臭です。しかし、皮膚上に存在する常在菌が汗の中の成分を分解し、変質させることでニオイが発生します。アポクリン腺から分泌される汗は脂質やアンモニアなどの成分が豊富なため、常在菌が繁殖しやすく、ニオイが強くなります。
さらに、汗腺の再吸収機能がうまく働かなければ、ニオイの元になるアンモニアなどの汗への排出が増加するので、ニオイは増強してしまいます。よい汗はサラサラ、悪い汗はベトベトというのを聞いたことがあると思います。汗腺の再吸収機能が正常に働いていると、汗は水に近く、常在菌が増殖しにくい酸性のサラサラしたよい汗になります。しかし、再吸収機能がうまく働かず血漿成分が汗として排泄されると、常在菌が増殖しやすいアルカリ性のベトベトしたニオイの強い汗になります。

ニオイの対策と予防 

ニオイ対策としては、その元となる汗、常在菌、ニオイそのものに対処する方法を考えます。
汗 :制汗剤で発汗を抑える
常在菌:殺菌剤で常在菌の増殖を抑える
ニオイ:消臭剤でニオイを消す
市販のデオドラント製品には、これらの作用を発揮する成分が含まれたものが数多くあるので、自分に合ったものを選んで使用しましょう。
ニオイの予防法としては、運動、食事、メンタルのケアが挙げられます。日頃から軽い有酸素運動をしていると、汗腺の再吸収がよりうまく機能してよい汗をかきやすくなります。しかし、運動不足になると末梢血管の血行が悪くなり,汗をかいても悪い汗になってしまいます。食事では、肉やバターなどの動物性脂肪は皮脂腺やアポクリン腺の活動を過剰に刺激するため、控えめにしましょう。ビタミンCやビタミンEは抗酸化作用があるので、ニオイの防止になります。ストレスや不摂生も汗のニオイを増す一因になるので、体のためにも健康的な生活をこころがけましょう。
多汗症、汗が多く出て生活に支障があるレベルで悩んでいる方もいます。部位で多いのは脇、手、足、頭です。病院でできる治療としては塩化アルミニウム溶液の外用、イオン導入などがあります。また、脇の下の多汗症に限りますが、「重度の原発性腋窩多汗症」と診断された場合はボツリヌス治療が保険診療で治療が可能となりました。悩んでいた方は皮膚科で診察を受けてみてください。

教えてくださったのは
汗とニオイ対策|新潟県 新潟市 さくらひふ科 院長 西條忍 先生

新潟県 新潟市

さくらひふ科 院長 西條忍 先生

皮膚科全般、皮膚、毛髪、爪のお悩みはお気軽にご相談ください。(社)日本皮膚科学会認定皮膚科専門医で(一社)日本アレルギー学会認定アレルギー専門医の女性医師による普通の皮膚科診療所です。難治性皮膚疾患に対する光線治療もできます。

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