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第7回 赤坂 YOUR SONG 山田賢二氏・山崎八州夫氏 第2章 永遠の友情に包まれた温かいバー。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

青山学院初等部、中等部、高等部、そして大学が一緒だった山田と山崎が共同経営でバー「ユアソング」をオープンするとき、親しい人たちが忠告したそうである。「共同経営なんてことをすると、たとえ儲かったとしても損をしたとしても、たいがいケンカ別れをするもんだ。やめたほうがいい。折角の長い友情に傷かつくぞ」
 そんな忠告に山田と山崎はまったく耳を貸そうとしなかった。ふたりの友情は岩よりも硬かったのである。学生時代と同じように、いまも仲良く友情を温めながら、毎晩一緒にバーで仕事をしているのである。当たり前の話だが、オープンしたころに来店したのは知り合いの客ばかりであった。青山学院時代の同級生、山田の古巣のアサヒビールの先輩や後輩たち、山崎が長年働いたオリコの先輩や後輩たちであった。しかし徐々に近所の方々が来てくれるようになった。いまでは遠くからも音楽通がやって来て、こんなLPはないだろうとわざと珍しい曲をリクエストしたりする。山田と山崎は悠々と笑いながら、膨大なコレクションのなかから探し出したその曲をかける。
ここはふたりの永遠の友情に包まれた温かいバーである。

シマジ:山田さんと山崎さんは社会人になってもよくふたりで会っていたんですか。

山田:サラリーマンになってからはおたがい忙しかったので、1年に2、3回会うのが精一杯でしたね。

山崎:それにふたりとも地方に単身赴任していた時期が長かったのでたまに電話で話すくらいで、そう頻繁には会えませんでした。

シマジ:じゃあ、ふたりでバーを開こうと考えたのは50代になってからですか。

山田:最終的に決断したのが55歳の時で、考え始めた時期は、今から10年以上前です。お互い単身赴任の時代が終わって山崎もわたしも東京勤務になり、またしょっちゅう会うようになってから、なにかふたりでやろうかという話になったのです。

山崎:とは言え山田はビールを注ぐくらいはできますが、カクテルなどは出来ません。わたしもそうなんです。そこでここにいる伊藤バーマンに助っ人として来てもらったわけです。

シマジ:なるほど。おふたりは店の経営と音楽担当というわけですか。そしてむかし懐かしい曲をかけて、あのころはこうだったとお客様と語り合う役を担当しているわけですね。

立木:それが重要なことじゃないの。懐かしい曲にはみんなそれぞれ思い出を抱いているもんだ。

高口:わたしもそう思います。お店に入るなりイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」がかかってきたとき、思わず泣きそうになったくらいです。あの曲は若いとき、主人と何度も聴いた思い出深い曲なんです。

シマジ:たしかに誰にでも「マイ・ソング」がありますよね。わたしもイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」はいい曲だなという思い出があります。あの曲が流行っていたころ仕事でも遊びでもよくロスに行っていましたから、あの哀しい旋律に感動して、ホテル・カリフォルニアに泊まったことがあるくらいです。瀟洒ないいホテルでしたよ。

高口:えっ、シマジさんはあのジャケットの写真にもなっているホテル・カリフォルニアに実際に泊まられたんですか。

シマジ:はい、バンガローに1人で1泊でしたが。

立木:どうせシマジのことだから集英社の取材費で泊まったんだろう。

シマジ:そうじゃないと言ってもそう思われるでしょう。わたしの不徳の致すところですね。

立木:ここの雰囲気が気に入ったね。落ち着ける。今度、シマジ抜きで1人で来るから、よろしくね。

山田、山崎:どうぞ、どうぞ。お待ちしています。

シマジ:では伊藤バーマンにおつまみを2つと、カクテルを2つ作っていただきましょうか。最初にタッチャンが写真を撮りますから、そのあとこちらのカウンターに回してください。

伊藤:畏まりました。ではそれまでシマジさんがここにキープしているタリスカー18年を飲んでいてください。

シマジ:タリスカー18年か。それではシェーカーに氷を入れて、水とシングルモルトを半々にしてシェークしてください。タリスカー10年ならスパイシーハイボールといきたいところですが、まあ、今日はいいでしょう。今度スパイシーハイボールセットを持参してもいいですか。

伊藤:どうぞ、どうぞ。新宿伊勢丹のサロン・ド・シマジで有名なスパイシーハイボールをわたしにも一度試飲させていただけませんか。

シマジ:喜んで。

立木:シマジが懇意にしている店はレストランでもバーでも必ずスパイシーハイボールセットが置いてある。だけどここにはないようだから、シマジはここはまだ浅い関係なんだなとおれはさっきから思っていたんだが、図星だったか。

シマジ:巨匠のおっしゃる通りです。今日で3回目かな。しかもこのタリスカー18年ものは、山田さんのお兄さんからのプレゼントなんです。お兄さんは弁護士をなさっているんですが、弟思いのいいお兄さんなんですよ。山田さんとはいくつ離れているんですか。

山田:わたしより5歳上なんですが、いろんなことで兄貴には頭が上がりません。

シマジ:そういえば弁護士仲間の久保利英明弁護士と一緒に飲んだときに「山田の弁護士としての欠陥は、背が高くてイケメンなところだ」とお兄さんのことをからかっていましたね。

伊藤:タリスカー18年のトワイスアップが出来ました。どうぞ。

シマジ:それでは高口さん、「スランジバー!」と言ってください。これはスコットランドのバーで必ず言われている乾杯の言葉で「あなたの健康を祝して」という意味です。

高口:スランジバー!

シマジ:スランジバー!

伊藤:まず最初に野菜スティックをお出ししましょう。キュウリ、ダイコン、黄色と赤のパプリカ、そしてトレビスという紫キャベツの盛り合わせです。あっ、まず撮影でしたね。立木先生どうぞ。よろしくお願いします。

立木:お嬢、速写してすぐ回すからね。

高口:はい。

シマジ:自慢ではありませんが、伊勢丹のバーではわたしが週末カウンターに立つだけで、タリスカー10年が平均でボトル2本はカラになります。お陰さまでタリスカーの売り上げランキングでは全国のバーのなかで4位を獲得しています。

山崎:わたしは新宿に住んでいますから、今度の週末にも早速行ってみたいです。

シマジ:どうぞいらしてください。ここの半分の広さもない狭いバーですが、週末は賑わっていますよ。

高口:そちらのショップではSHISEIDO MENをシリーズで売っていらっしゃるんですよね。わたしも伺わせていただきます。

シマジ:常連にはSHISEIDO MENの愛好者が多いです。

伊藤:次は生ハムとサラミの盛り合わせです。

高口:美味しそうですね。

シマジ:写真を撮ったらすぐこちらに回ってきます。

伊藤:ではお酒はわたしの自慢のマティーニです。撮影が終わったら冷たいうちにお飲みください。

立木:はい、マティーニ一丁上がり!

シマジ:これは結構ドライでイケますね。いいジンを使っています。

伊藤:女性に合わせて最後はブルーハワイで締めましょう。

シマジ:プレスリーの「ブルーハワイ」を聴きたくなってきました。

山崎:おかけしましょう。

高口:いいですね。

立木:はい、撮影終了。さっきからシマジが飲んでいるタリスカー18年を同じようにシェークしてくれますか。

シマジ:タッチャン、これはイケますよ。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

GOOD MUSIC BAR YOUR SONG
東京都港区赤坂7-5-7
赤坂光陽ビル2F
Tel: 03-5572-7220
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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