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第11回 西麻布 HABANA VEGAS 竹中光毅氏 第1章 ここはまるでハバナの街の幻想を見ているようだ。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

西麻布にある「HABANA VEGAS」はユニークなオーセンティックバーである。伊勢丹メンズ館8階の「サロン・ド・シマジ」同様、紙タバコは禁止している。それはシガーやパイプタバコは農作物であるが、シガレットは火薬や蝋がまぶされた工業製品だからである。また葉巻とパイプは文化と言えるがシガレットはその範疇には入らない、ただ簡便にニコチンを摂取するものでしかない、とわたしは常々思っている。
わが「サロン・ド・シマジ」にはセレクトショップも併設しており、さまざまな名品が売られているなか、SHISEIDO MENのフルセットも売られている。バーの常連のほとんどは葉巻やパイプの愛好者である。そしてSHISEIDO MENの大ファンでもある。

シマジ:竹中さん、こちらが立木先生で、あちらが資生堂からいらした今月のゲストの高橋沙織さんです。

立木:よろしくね。

高橋:よろしくお願いします。

竹中:こちらこそよろしくお願いします。

立木:ここにいると、本当にハバナのバーにいるような気分になるね。

竹中:ありがとうございます。

立木:おれはこの間ハバナの街とキューバ人を撮りに行ってきたばかりなんだが、ここには懐かしい雰囲気がところどころにあっていいね。棚にずらっとラムのボトルが並んでいるのは壮観だ。

竹中:うちはコーヒー豆もキューバ産を使っています。料理もキューバ料理を出しています。

シマジ:「ハバナ・ヴェガス」って「ハバナ農園」って意味ですよね。

竹中:正確には「ヴェガス・ハバナ」というんでしょうが、日本語のゴロが悪いのであえて「ハバナ・ヴェガス」と命名しました。ここ2階は会員制シガーBAR、1階はシガーショップを兼ねたカジュアルスタンディングシガーBARとして営業しております。

高橋:竹中光毅さんというお名前も渋くて素敵ですね。

竹中:これは母がつけてくれたんです。

竹中:父が若い頃、夏休みに北海道礼文島の民宿でアルバイトをしていたそうなんですが、たまたまそこで働いていた母と知り合い、冬は暖かいところがいいと2人で南の石垣島の民宿でアルバイトをしていたそうなんです。そんなわけで母がぼくを身ごもり沖縄でお産したと聞いています。

高橋:いいお話ですね。ではお父さまもお母さまもお若いでしょう。

竹中:はい。父は60歳で母は59歳です。ぼくは38歳です。両親はいま岐阜のほうで暮らしています。

立木:撮影の準備はできた。そろそろなにか作ってくれる。

竹中:かしこまりました。今日は徹底的にハバナドリンクで参ります。

立木:うーん。面白そうだ。

竹中:ではまずモヒートを作りましょう。うちのモヒートはハバナのものと同じで、ライムではなくレモンを使います。砂糖も日本のバーでは茶色の砂糖が主に使われていますが、うちではハバナで使われている白い砂糖を小さじ2杯入れます。

シマジ:そのアズーラっていう袋はハバナのスーパーで見たことがあります。

竹中:アズーラとは砂糖のことです。ミントはキューバでは普通イエルバブエナを使っていますが、ぼくはアップルミントを使っています。それもこのビルの屋上で栽培しているものです。みなさまがいらっしゃる前に摘んできた新鮮なアップルミントです。それからうちではトリニダードトバゴ産のアンゴスチュラ・ビターズを2滴垂らします。ラムはハバナクラブ3年ものと7年ものを15ミリずつ入れます。ソーダはウイルキンソンを使い、あとはビルドアップしながら1杯にしてでき上がりです。

高橋:見るからに美味しそうですね。

シマジ:いま竹中バーマンに同時に2杯作ってもらいましたから、高橋さんの分はすぐきますよ。

高橋:今日は立木先生が撮影する前に飲めるんですか。

シマジ:そういうことです。

立木:おれもハバナでモヒートを飲んだが、たしかにレモンが入っていたね。うーん、美しい。ヤマグチ、この辺にライトを当ててくれ。

ヤマグチ:かしこまりました。

高橋:ストローが2本ついているんですね。これはどうしてですか。

竹中:イギリスの社交界の飲み方なのですが、1本はもし詰まった場合の予備のためです。飲んでいたストローが詰まったからといって、大の紳士に「ストローをもう一本くれ」と言わせるのは芸がないとイギリス人は考えたのでしょう。

シマジ:それに2本で飲んだほうが2倍の量が口に入ってきて飲んだ感じがよりしますよね。

高橋:これは美味しいです。いままで飲んだどのモヒートよりも飲みやすいです。

竹中:自慢になって申し訳ないですが、ぼくは日本の創作モヒートコンクールで優勝したことがあるんです

高橋:やっぱり。

竹中:シマジさん、葉巻はこれをお吸いください。トリニダードのファンダドレスです。

シマジ:どうしてわたしがトリニダードの葉巻が好きだと知っているんですか。

竹中:シマジさんのファンの方がここによくみえるんですが、そのお客さまにお聞きしておりました。

シマジ:竹中さんのバーもシガレットは禁煙だそうですね。

竹中:シマジさんのところのサロン・ド・シマジのバーも紙タバコは禁煙だとお聞きしていますが。

シマジ:あの嫌な臭いは折角の葉巻やパイプタバコのいい香りをダメにするからなんですよ。

竹中:うちも同じ理由で禁止しているんです。

シマジ:じゃあ、竹中さんはパイプもおやりになるんですか。

竹中:銀座で働いていたころはよくパイプ掃除をさせられました。そのうち自分でもやるようになったんです。

シマジ:ではここにわたしの吸いかけの“ヘレニズム”というパイプタバコがあります。これをあとで吸ってみてください。

竹中:ありがとうございます。おお、「この一服を文豪開高健に捧ぐ」と缶のラベルに書いてありますね。

シマジ:これはわたしが若いときニューヨークとロサンジェルスのパイプタバコを半々でブレンドしたのを吸っていたら、開高先生が吸ってお気に召して「ヘレニズム」と命名されたんです。

竹中:なるほど、東のニューヨークと西のロスのタバコを一緒にしたのでそう命名されたんですか。粋ですね。

シマジ:それをドイツのダンタバコが復刻してくれたんです。去年の12月24日から伊勢丹のサロン・ド・シマジで売りはじめました。それがもう凄い人気で、12月24日と25日はたまたま土日だったんですが、2日で100缶も売れましたよ。

竹中:さぞかし美味しいんでしょう。ヘレニズムという名前がいいですね。

立木:モヒートの撮影は終了!次はなんなの?

竹中:それではキューバ産のコーヒー豆、クリスタルマウンテンを使ったスムージーをつくりますか。まずこれでエスプレッソを30ミリ作り、ハバナクラブ7年ものを30ミリ、それにオレンジジュース30ミリ、キュビーターコーヒーリキュール30ミリを入れてクラッシュアイスと一緒にブレンダーで混ぜます。お皿にキューバのコーヒー豆を数個飾りに載せます。もちろんこれはおつまみとして食べてもいいんですよ。

シマジ:名前はなんていうカクテルなんですか。

竹中:これはコーヒー豆そのもので「クリスタルマウンテン」といいます。

シマジ:それも撮影用と高橋さんの分、2杯作ってくれますか。

竹中:はい。承知しました。お安い御用です。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

HABANA VEGAS
ハバナベガス

東京都港区西麻布2-25-32ブレスビル1
03-6433-5318
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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