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第11回 西麻布 HABANA VEGAS 竹中光毅氏 第3章 西麻布のビルの屋上にあるハバナ農園。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

西麻布の「HABANA VEGAS」の1階では午後1時からシガーショップがオープンしている。竹中バーマンはタバコ販売委託免許を取得しているため、自ら輸入してきたシガーを堂々と自分の店で売ることができるのである。バーのほうは午後6時にオープンして4時にクローズする。
バーで使うハーブはビルの屋上ガーデンで栽培しているから、すべて西麻布産のハーブというわけだ。ここはまさにハバナ農園なのである。

シマジ:竹中バーマンは何歳からバーのカウンターに立っているんですか。

竹中:19歳でしたか。岐阜の田舎のバーで働きはじめたのが最初でした。

シマジ:いまから約20年前ですね。バーのオーナーとして自分のお店を持つまでは大変だったでしょう。しかもこうしてハバナに特化したバーを作るというのは、更にひと苦労もふた苦労もあったでしょうね。

竹中:若いときの苦労は買ってでもすべき、と言いますが、ぼくもそう思いますね。またぼくは両親の旅好きな遺伝子を受け継いでいるようで、リゾートホテルでバイトして貯めた資金でドイツに行き、バックパッカーとしてドイツ中を半年かけて旅したことがありました。このドイツ1人旅は後年いろいろ役に立ちました。ですから葉巻もアップマンが大好きでよく吸っています。キューバに葉巻工場を作らせたドイツの銀行家のハーマン・アップマンを称える気持ちがあるんです。

シマジ:ハバナに年に4回も行くのはシガーの仕入れのためなんですよね。

竹中:そうです。1年で合計600万円近く仕入れてきます。ハバナは銀座のバーに働いていたころからよく行かされましたから、いちばん多く行った外国ですが、いちばん好きな街でもあります。

シマジ:国全体は貧しいけれど、底抜けに明るいところがいいですね。

立木:でも教育費も医療費も国民全員タダというじゃない。

竹中:1950年代、60年代のアメリカのクラシックカーがタクシーとして走っているのもいまのうちでしょうね。そのうちどんどんアメリカナイズされてマクドナルドができ、スタバができるでしょう。

シマジ:いままではカナダのトロントからハバナに入るのがベターでしたが、そろそろアメリカから直行便で入れるようになるんでしょうね。

高橋:そうなんですよね。カナダから2、3時間でキューバに行けたんですよね。わたしは学生時代に5年ほどカナダで生活していましたから、行こうと思えば行けたんですよ。

シマジ:若いときに外国で暮らすというのは貴重な体験ですよね。

高橋:20歳になったくらいの頃でしたか、モンゴルにボランティアで行ったことがあり、現地でお世話になるモンゴルの女性へのお土産に資生堂の化粧品を持っていきましたら、とても喜んでくれたんです。日本人として嬉しかったですし、誇りに思った経験がきっかけで資生堂に興味を持つようになったんです。

シマジ:へえ、なにがきっかけで会社を選ぶかわからないものですね。

高橋:わたしの就職活動当時から、すでに資生堂はグローバル展開を加速させており、世界中の人に日本の技術で作った上質な化粧品を買ってもらうことのお手伝いが出来たらいいなあと思ったのが入社を希望したメインファクターです。

シマジ:何年入社だったんですか。

高橋:2009年です。はじめは近畿第2営業部大阪に配属になり、大阪のドラッグストア営業担当をしていました。そのころ週末にドラッグストアで手作りの着ぐるみを着て美容ドリンクの販売促進をしていたとき、たまたま友達の親にその姿を見られ、友達に心配されたのもいまでは笑える話です。2012年から国際事業部企画部に移り、米州圏の営業管理の仕事をして、2013年にはニューヨークのNARS Cosmeticsで海外研修を行い Office、2014年からSHISEIDOブランドコミュニケーション担当として現在に至ります。

シマジ:資生堂SHISEIDOはいま何カ国を相手に商売を展開しているんですか。

高橋:弊社SHISEIDOはいま世界88の国と地域で展開しています。わたしはグローバルブランドやSHISEIDOのコミュニケーション戦略を担当しています。SHISEIDOブランドの若返りを担うメーキャップラインのコミュニケーション戦略を構築する業務や、プレス向けの情報制作、お客さまに向けたデジタルアセットの制作を行うのが主な業務です。

シマジ:高橋さんはまさにキャリアウーマンの道をまっしぐらに進んでいるんですね。竹中さんも銀座で一流のオーセンティックバーで修行したそうですね。

竹中:21歳のころから銀座で働きました。ぼくは岐阜県出身なもので海を知らなかったので、休日にバイクで湘南海岸に遊びに行ったら顔が日やけで真っ赤になってしまい、「われわれバーテンダーは日やけなんかしちゃダメなんだ!」と怒鳴られたことをよく覚えています。それから老舗として有名な「池田」のカウンターにも立ちました。まだ銀座のいいところが残っていた時代でした。お客さまが吸われるパイプを預かって開店前までにきれいにクリーニングをしたりしたのが懐かしいですね。いろんなバーで働きましたが、最後はハートマングループの「ザ・ライオンズ・デン」のカウンターで働いていました。

シマジ:その頃知り合ったお客さんがここにいらっしゃっているんですか。

竹中:そうです。お客さまはシガー好きな方が多いです。

シマジ:じゃあ、ハバナに行くとなったら、あれを買ってきてくれとか注文も多いでしょう。

竹中:そうですね。多いときは200万円分の葉巻を買ってきます。ぼくは葉巻輸入免許を持っていますから、パスポートを出しただけでOKですから楽なんです。まあ税金は21%つきますが。

シマジ:そこまできちんとやっているバーは珍しいですね。

竹中:どうせやるなら徹底的にやるのがぼくの性分なんです。

シマジ:ただ葉巻を売っているのとはちがい、竹中さんは葉巻をこころから愛して売っている感じですね。

竹中:ありがとうございます。ぼくが働いていたバーのこだわりは凄かったですよ。オーセンティックバーの「池田」などは18年もの以下のマッカランは置いていませんでした。しかも1938年から1978年までのマッカラン18年がすべて揃っていましたよ。そうそう、シマジさんが大好きだというブラックボウモア1964年も何本もありましたよ。

シマジ:そういえば、噂によると今年新しいブラックボウモアが出るらしいですね。1本200万円はするそうですが。

立木:シマジ、気前のいいところで200万円出して1本買ってくれ。久しぶりにおれもブラックボウモアを飲みたくなった。

シマジ:うーん、それは難しいかも。最近、ベル&ロスのバーニング・スカルの時計を買ってしまったばかりなんです。

立木:どうしてお前はそんなにスカルが好きなんだ。左右の指に一個ずつスカルの指輪をしているんだから、それで十分だろう。

シマジ:それが今度発売されたベル&ロスのバーニング・スカルはタトゥーのデザインのなかにうっすらブルーに輝くスカルが埋め込まれているんですよ。美しいものを見つけたら迷わず買え、というわけで衝動買いしてしまったんです。

立木:どうして今日はそれをしていないんだ。

シマジ:いま既製のベルトを外してガルーシャ・ダブル・ストラップに代えてもらうための制作をお願いしている最中だからなんです。そうすると豪華な額縁に名画を入れた感じになり、なかなかいいんですよ。

竹中:完成したらぜひ見せてください。

立木:そんなものおれは見たくない。ブラックボウモアが飲みたい。

高橋:わたしは、ブラックボウモアですか、それを飲みながら、そのバーニング・スカルの時計を見てみたいです。

立木:なるほど。なかなかいいこと言うじゃない。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

HABANA VEGAS
ハバナベガス

東京都港区西麻布2-25-32ブレスビル1
03-6433-5318
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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