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第8回 白楽 BAR LADDIE 島田孝一氏 第1章 強運が導いたウイスキーの神様との出会い。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

アイラ島生まれでアイラモルト造りの名人、ジム・マッキューワンはボウモアのウイスキー造りで名を馳せた人である。2001年、ブルックラディが再開するとき、ジムはボウモア蒸留所からブルックラディ蒸留所に移り、いろいろなタイプのウイスキーを造った。ジム・マッキューワンはすでに伝説のウイスキーブレンダーになっていた。
2006年、当時31歳だった島田孝一バーマン(42)は、サラリーマン生活をかなぐり捨てて、スコットランドへバックパッカーの旅に出た。モルト・ウイスキーの蒸留所だけでも100以上あるといわれるスコットランドの蒸留所を1カ所1カ所あたり、どこかの蒸留所で職に就くことが夢であった。
まず蒸留所がひしめき合うアイラ島に上陸した島田は、強運の男であった。最初に訪ねたのは再開したばかりのブルックラディ蒸留所、そこで運よく出会ったのがウイスキーの神様、ジム・マッキューワンであったのだ。
島田が蒸留所で働きたいという思いの丈を情熱をもって訴えると、ジムは快く受け入れてくれた。しかも蒸留所の敷地内に住まわせてくれ、ウイスキー造りのすべてを伝授してくれるほど、ジムは日本人の島田を自分の息子のように可愛がったという。思いきったじかあたりが人生を変えるほどの幸運に繋がるのだから、人生、おもしろいではないか。
日本に戻り島田がオープンしたバー、その名も「ラディ」は、東急東横線・白楽駅から徒歩30秒ほどのところにある。

シマジ:お店の看板の字体は手書きの英語で書かれていますね。

島田:はい。あれはジム・マッキユーワンに書いてもらった、大切な宝物なんです。

シマジ:伝説のウイスキー造りの名人、ジム・マッキユーワンに書いてもらったんですか。それほど光栄なことはないでしょう。
さて、こちらが立木先生です。そしてあちらが資生堂からきてくれた原田季子さんです。

立木:よろしく。

原田:今日はよろしくお願いします。

島田:こちらこそよろしくお願いいたします。

立木:最初にカラーで4種類撮影するから、なにか4種類作ってここのカウンターの上に置いてくれますか。

島田:承知いたしました。

立木:そのあと、シマジを入れて3人の写真を撮るから、それまでお嬢は楽にして飲んでいていいよ。

シマジ:島田さん、あなたの思い出のブルックラディの1杯からいきましょうか。

島田:はい。では、アイラバーレイ(大麦)で作った2009年蒸留のブルックラディからいきましょう。これはジムと蒸留所の熱い思いが籠もったものです。

シマジ:原田さん、撮影が終わったら飲んでくださいね。もちろんわたしと一緒に飲みましょう。

原田:ブルックラディというのはスコットランドのどこのウイスキーですか。

シマジ:アイラ島と言いまして、ちょうど日本の淡路島くらいの小さな島なんですが、シングルモルトの蒸留所が8カ所もあるんですよ。

立木:はい、第1弾の撮影は終了!

シマジ:では島田さん、その2009年ヴィンテージのブルックラディと同じ量の水を入れて氷でシェークして、半分ずつ原田さんとわたしにください。

島田:かしこまりました。はい、どうぞ。

原田:飲みやすいですね。

シマジ:リッチなフルーツの香りがしますね。

立木:次は?

島田:「ローズ&ボタニスト」というカクテルを作りましょう。これはブルックラディ蒸留所で作っている「ボタニスト」というジンを使って作ります。

シマジ:ボタニストって植物学者のことですよね。

島田:そうです。ブルックラディ蒸留所で働く人たちがアイラ島に生息する22種類の植物を採取して、ポットスティルの首のところに植物を入れたバスケットを取り付け蒸気が通過するようにして、ジンに香りつけしたものです。それにわたしのアイディアで、フランスの老舗のスパイスショップで手に入れた、乾燥したバラの花を漬け込んだ自家製のリキュールを上からかけてでき上がりです。ツマミにつけたスペインのカカオ・サンパカのバラとイチゴのチョコレートを一緒に召し上がると最高です。では立木先生、お願いいたします。

立木:これはこっち向きが正しいの。

島田:そうです。

シマジ:では3番目はなんでしょうか。

島田:やはりジンのボタニストを使ったモスコミュールなんですが、天日干ししたショウガを漬け込んだボタニストに、うちではライムの代わりにレモンを半分搾って入れます。ソーダはシマジさんのお好きなサントリーの山崎プレミアムソーダを使っています。

シマジ:それはそれは、光栄です。でもショウガを天日干しにするのはなぜなんですか。

島田:そうすることによって、ショウガ独特の生臭さが消えるんです。

立木:第2弾の撮影もOK! 第3弾は?

島田:ではモスコミュールをお願いします。

立木:うーん、いい香りだ。

シマジ:原田さんは結構イケる口ですね。

原田:どうでしょうか。普通だと思います。

シマジ:では撮影が終わったばかりの「ローズ&ボタニスト」は1人で飲んでください。そのサンパカのチョコレートは美味しいですよ。

原田:では遠慮なくいただきます。このチョコレートを口に入れながら飲んでみますね。うん、凄く美味しいです。でもアルコールは強いですね。

シマジ:大丈夫。それくらいで原田さんは酔わないでしょう。もしダメなら残してください。あとはわたしが引き受けましょう。

原田:半分はいただきましたが、ちょっとわたしにはきついです。

シマジ:ではわたしがいただきましょう。島田さん、ブルックラディ蒸留所でジンを作っているとは、わたしは知りませんでした。まさかウイスキーを作っている同じポットスティルを使っているわけではないでしょうね。

島田:閉鎖した蒸留所のポットスティルを、新しいウイスキーを作る為に購入し使っているようですね。しかしそのポットスティルでは美味いウイスキーができなかったので、何か生かせる方法はないかと考えて、アイラ島でアイラらしいジンを作るアイディアを思いついたようです。ジンは1回蒸留で十分香りがつきますから。

立木:モスコミユールの撮影は終了!最後は?

島田:これもブルックラディ蒸留所のウイスキーなんですが、ハンドフィルボトルといいまして、蒸留所のショップでビジター用の空瓶を買って、自分で樽から詰めるものなんです。1994年蒸留で2006年ボトリングのものです。

シマジ:たしかブルックラディ蒸留所は1度閉鎖されたあと、2001年に再開していますよね。1994年蒸留ということは?

島田:やはりポットスティルがダメにならないように、2年に1回くらいは稼働させていたらしいですよ。

シマジ:そういうことだったんですか。

島田:ではこれはショットグラスに入れて撮影していただけますか。

シマジ:原田さん、一息ついたところでモスコミユールはどうですか。

原田:いただきます。これは先程よりも優しい味がします。美味しいです。

立木:OK、これでカラーの撮影は終わった。マスター、おれとシマジにこのハンドフィルボトルのモルトをさっきのようにシェークして1杯ずつ作ってくれますか。

島田:かしこまりました。

シマジ:うーん、これは飲みやすいですね。フルーティーでちょっとリッチなレーズンの香りがする。

立木:チョコレートの香りをおれは感じるね。

島田:お2人の感想の通りだと思います。

立木:シマジ、よかったね。おれたちのテイスティングが大きくハズレていなくて。

新刊情報

神々にえこひいきされた男たち
(講談社+α文庫)

著: 島地勝彦
出版: 講談社
価格:1,058円(税込)

今回登場したお店

BAR LADDIE
神奈川県横浜市神奈川区白楽103-17
Tel:045-401-0347
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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