Back to Top

第10回 広尾 ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー 下野昌平氏 第4章 資生堂社員の体当たり新人物語。

撮影:立木義浩

シマジ:先日、新宿伊勢丹メンズ館のサロン・ド・シマジにアラブの大金持ちが訪ねてきて、「SHISEIDO MENをあるだけ売ってくれ」と、嬉しいことに全商品を買って行ったんですよ。サロン・ド・シマジをオープンして5年4カ月になるんですが、そんなことは初めてでした。

別府:ありがとうございます。

シマジ:その後すぐに全商品を注文しようとしたところ、商品が品切れて入荷ができず、普段買っていただいているお客さまに迷惑をかけてしまい困っているんです。別府さん、サロン・ド・シマジだけは品切れが出ないようにという、お願いをしてみてくれませんか。

別府:大変ご迷惑をおかけしております。

シマジ:SHISEIDO MENを愛用しているお客さまに、大変申し訳なく思っているんです。そういう方たちがほかのメーカーのものを使いたくない気持ちは、わたしにも手に取るようにわかります。たとえばサンデーバトラーのミズマなどは、ヘアワックスの欠品のためにヘアがハリネズミ状態になっているのを、仕方なく帽子を被ることで体裁を整えてバーに立ってくれているんですよ。まあ、お洒落なボルサリーノがなかなか似合っているんですがね。

別府:本当にご迷惑をおかけしております。もう暫くお待ちください。

シマジ:地方からやってくるSHISEIDO MENの愛用者に苦悶の表情で「ないんですか」と言われると、この連載をやっているわたしとしてはじつに胸が痛む思いです。ともかく全商品が店頭に並ぶ日を、一日千秋の思いで待っています。

シマジ:この売れ行きはわたしも嬉しいんですよ。わたしはすでに12年もSHISEIDO MENを愛用していますが、ようやく日本もヨーロッパ並みに、男性が本物の化粧品に目覚めたのか、とこころのなかで快哉を叫んでいるんです。この連載の効果がジワジワと効いてきたようで、嬉しい限りです。

別府:さらに売れ行きが伸びますよう、今後ともよろしくお願いいたします。

シマジ:わかりました。

立木:シマジ、そろそろお嬢のことを訊かないと時間がなくなるよ。

シマジ:あっ、そうでしたね。別府さんは数多会社があるなかでどうして資生堂に入社したんですか。

立木:単刀直入な質問だ。

別府:わたしは海外に住んでいた経験から、日本のものづくりとおもてなしの精神に対して尊敬の念を抱いており、そういう日本の良さを海外に積極的にアピールしているメーカーに就職したいと思い、資生堂を受けたんです。またCM等で資生堂のイメージに好感を抱いていたことも要因ですね。もし資生堂に入れたら、キャリアを積んでいくと同時に、年相応の美というものを自分も磨いていけるのではないかと感じ、入社したいと決意したんです。

シマジ:その夢が叶えられてよかったですね。いまはどういう職種で働いているんですか。

別府:はい、SHISEIDOというブランドのPRを担当しております。もっと具体的に言いますと、これから発売される商品のPR素材の作成・提供を行い、大きなローンチの際には、グローバルプレスイベントを企画し運営しています。PR素材には、各国でのPR活動を円滑にできるよう、商品の情報や写真を最も素敵な表現で提供するようにこころがけています。昨年はスキンケアシリーズ「フューチャーソリューションLX」のリニューアルをしましたし、今年1月発売の新スキンケア「エッセンシャルイネルジャ」の発表会のため、グローバルからメディアやインフルエンサーを招致し、イベントを大々的に実施いたしました。

シマジ:別府さんは英語が話せる利点を活かした仕事も多いのではないですか。

別府:そうですね、時折海外のエディターの方が来日した際はわたしがアテンドをする機会があるんですが、資生堂のスパや資生堂パーラーにお連れし、資生堂の歴史やこだわりをお話させていただくと、いつも大変良い反応をいただきます。そのときは嬉しいですね。また「フューチャーソリューションLX」のPR活動の一環で、半年間に4回も高野山に行くという貴重な経験もさせていただきました。最初は周囲になにもないのが怖いと思っていましたが、4回目ともなると、マイ・ベスト宿坊を選定できるようになったり、土地勘がついてどこも怖くなくなったり、むしろもっと知りたいという気持ちになりました。最近、テレビで高野山が特集されていましたが、夢中になって見てしまったくらいです。そのほかにも、Japanese Richnessをテーマにしている「フューチャーソリューションLX」に関連して、佐賀の伊万里や伊勢神宮などにも行かせていただきました。日本人でもなかなか足を運ぶことができない場所に行くことができ、日本の良さを実感することができてとても光栄に思っております。

シマジ:先日たまたまニュース番組を見ていましたら、アプリによる肌測定結果によって、その日その瞬間の肌にぴったりのスキンケアができるようなものを資生堂が開発しているという内容でしたが、あれは凄いですね。

別府:わたしも見ましたが、個人がより自分に合った化粧品を使う時代がすぐそこまできているんですね。わたしも驚きました。

シマジ:しかもスマホを使って情報を送れるんですよね。わたしにはよくわかりませんが、凄い時代がやってくるんだなと思いました。別府さんは店頭で営業活動をやられたことはあるんですか。

別府:もちろんありますよ。それこそ営業時代には、夏の商材である日やけ止めや美白美容液を売るために、毎年のように担当店で催事をしていました。そのときほかのメーカーの日やけ止めをご覧になっているお客さまにお声かけして、資生堂の日やけ止めがいかにいいかを力説した結果、こちらの商品を買っていただいたときの嬉しさはいまでも忘れられませんね。同じエリアにあるほかのドラッグストアではなく、わたしの担当店で買ってもらうためにいろいろ頑張りました。ときには金髪のカツラをかぶって大きな声で宣伝したり、ときには太陽の絵を描いた手作りのお面を頭につけて宣伝したり。いま思い出すとすべて懐かしく感じますが、そのときはともかく必死で、どれも体当たりでやっていましたね。

立木:シマジの新人のときの話を聞きたいね。

シマジ:わたしは本屋で2週間働いたことがあるんですが、そのころの日本人はまだ本を読んでいたんですね。おかげで結構忙しかったんですよ。1966年でしたか、ちょうど岩波書店から分厚い夏目漱石全集が発売されたときで、自転車に重い全集を何巻も積んで、若い店員と一緒に、下町の家々に配達したのを覚えていますね。でも、他社の本を売るなんてこれはくだらないことだ、とふと思ってしまい、若い店員に「昼飯にうな丼を奢るから、わたしの分も配達してくれないか」と相談を持ちかけると、「いいですよ。ぼくが1人でやりましょう」ということになり、わたしは喫茶店で本を読んでいましたがね。

立木:まあお前らしいと言えばお前らしい話だね。いまのシマジを彷彿とさせるエピソードだ。

別府:あっ、下野シェフのお肌チェックを忘れていました。

下野:じつはいつやってくれるんだろうとさっきから内心気になっていたところでした。お願いします。

別府:下野シェフは西暦何年のお生まれですか。

下野:1972年です。

別府:ではここにお座りください。

下野:そんな小さな機器でわかるんですか。凄いですね。

別府:判定が出ました。Cでした。しかも肌年齢は39歳です。

シマジ:凄いじゃないですか。45歳の肌年齢が39歳と出るなんて、やっぱりスコットランド産の雷鳥の脂がシェフの肌に染み込んでいるんじゃないですか。

別府:お肌がしっとりしていて、とてもいい状態です。でも今日お持ちしたSHISEIDO MENを毎日お使いいただくと、近い将来Bも夢ではありませんよ。

下野:ありがとうございます。早速明日の朝から使わせていただきます。

シマジ:よくSHISEIDO MENの在庫がありましたね。

別府:いままでの先輩たちがこの連載のために確保していたようです。

シマジ:それはよかったですね。それじゃ来月もプレゼント分はあるんですね。

別府:あると思います。ご安心ください。

新刊情報

神々にえこひいきされた男たち
(講談社+α文庫)

著: 島地勝彦
出版: 講談社
価格:1,058円(税込)

今回登場したお店

ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー
東京都渋谷区広尾5-19-4 SR 広尾ビル1F
Tel:03-5422-8851
>公式サイトはこちら (外部サイト)

PageTop

このサイトについて

過去の掲載

Sound