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第8回 二見書房 取締役兼部長兼編集長米田郷之氏 第4章 人生はやっぱり出会いである。

<店主前曰>

人生は出会いである。わたしが20代後半で出会った今東光大僧正は、凄いインパクトがあった。たった4年にも満たない短い歳月のお付き合いだったけれど、大僧正から教わった大切なことは山ほどある。いまでも寂しいとき、嬉しいとき、上野寛永寺のお墓に遊びにいって大きな声で報告している。「シマジ、おめえな、寂しいときは、いつでもここに遊びにくりゃええんだ。おれはここで大人しく眠っているさかい、大きな声でしゃべってくれな」と、自分でデザインしたお墓にわたしを案内しながら、まるで自分の家に遊びにこい、といわんばかりの普通の会話で語ったものだ。さすがは天台宗NO.2の大僧正である。だから、わたしもこころのなかでいまでも、しょっちゅう大僧正と会話している。そういうことをむかしの人は「いますがごとく」といったものだ。
 女と男の関係がそうであるように、男と男の仲も年齢の差など微塵も問題でない。また歳月の長さも関係ない。江戸時代の話だが、本居宣長と賀茂真淵は生涯たった一度だけ伊勢の旅籠で会った。その話は「松坂の一夜」として歴史的に有名である。5歳若かった宣長は真淵の『古事記』に関する該博さに驚き入門した。
 いま現代人はツイッターやメールでやり取りをして人間同士の直あたりをあまりしなくなった。風景だってそうだ。本物のアマルフィの美しさを堪能した人と、テレビや映画でみた人のこころに残る映像は似て非なるものなのである。

シマジ そうだ。ヨネダ、このSHISEIDO MENのつけ方の順番をしっかり覚えたほうがいいね。

ヨネダ そんなに難しいものなんでしょうか。

シマジ おれだって間違ってアイスーザーを最初につけていたくらいだからな。

ヨネダ それでは先ほど教わったように順番通りやってみますよね。まずクレンジングフォームで洗顔する。3、4日の頻度でディープクレンジングスクラブで洗顔する。これは伊勢丹メンズ館のサロン・ド・シマジで近々購入いたします。シマジさんはいまこればかりで洗顔しています。

シマジ ヨネダ、余計なことはいわなくていいんだ。

ヨネダ それから顔を叩くようにトーニングローションをつけます。その次は、えーと、えーと、あっ、そうだ。アクティブコンセントレイティッドセラムをぬるんでしたね。それからいちばん高いスキンエンパワリングクリームをつける。そして最後にヨーロッパの男性に人気のあるというアイスーザーで目の周りにぬり込む。

シマジ 狭間さん、これでいいんですよね。

狭間 100点満点の正解です。しかもアイスーザーのコメントまでつけていただき、120点差し上げますわ。

立木 狭間さん、甘い、甘い。やさしすぎるよ。そんなことをいうと、ヨネダはすぐつけ上がるタイプだよ。

シマジ いいじゃないの。ヨネダはすっかりSHISEIDO MENモードに入ってるんだから。きっとヨネダは、おれくらいのモチモチ肌になりたい欲望が湧いてきているんだよ。

立木 順番ってそんなに厳しいものなの。

狭間 そのほうが効き目がたしかです。

立木 こんなに忙しい時代なんだから、それって全部一緒の瓶に入れちゃって、1回ぬればOKなんてならないの。

シマジ タッチャン、結構、いろんな容器から出して、ゆっくり化粧をするのもゆとりってもんなんだよ。だから、おれは絶対にアメリカ人みたいに電気カミソリは使わない。トルフィット&ヒルのシェービングクリームをつけて毎朝ヒゲを剃っている。あの快感を女性にも味わってもらいたいね。

立木 それは無理な話だろう。

シマジ あのやんごとない香りだけでも嗅いでもらいたいな。

立木 シマジは奥さんに嗅がせているのか。

シマジ うちのは見向きもしない。これは同じものをバッキンガム宮殿でダンディーなチャールズ皇太子とお父上のエジンバラ公が毎朝使っているんだよ。

ヨネダ チャールズ皇太子はSHISEIDO MENを使ってるんでしょうか。

立木 鋭い質問だ。

シマジ 狭間さん、どうなんですか。

狭間 さあ、丸山部長に訊いてからお伝えいたします。

シマジ まあ、ロンドンは古くからグルーミングが発達している街だからね。ペンハリガンやDRハリスやトルフィット&ヒルがひしめき合っているからね。

ヨネダ 突然ですが、シマジさんの3人のお師匠さんのなかで、どなたが肌はきれいでしたか。

シマジ そうだね。開高さんは接吻した仲だが、意外にキメは細かくなかったかな。シバレンさんは絶えず煙を立ち上らせていた愛煙家だったから、スモークされたような肌だった。それにゴルフやけで黒かった。そうだね。やっぱり今東光大僧正がいちばん肌は白くてモチモチな感じだったかな。

ヨネダ すると肌がいい人のほうが長生きするっていうことですね。

シマジ ヨネダ、鋭い指摘だ。そうかもしれないね。肌は食い物や飲み物にも左右されるんじゃないか。東スポのフルカワなんか毎日5㍑の水を飲んでいるそうだ。あいつはたしかDだったかな。ハギワラのCは決して機械が壊れていたわけじゃない。あいつは食道楽の男だからね。ちゃんとした食事を摂取してその上にSHISEIDO MENをぬっていれば完璧だよ。まあ、ヨネダ、明日から使ってごらん。愉しみが一つ増えたことになる。2ヶ月後、必ず報告してくれよ。

ヨネダ もちろんです。生涯これからSHISEIDO MENを使わせていただきます。余ったら妻に棺桶に入れるように遺言を残しておきますよ。

立木 そうらみろ。シマジ、ヨネダはすっかりシマジの”棺桶発言”で傷ついてしまったようだ。大丈夫、ヨネダ、おれがいい男に撮ってやるからな。

ヨネダ 立木先生、ありがとうございます。そのお言葉で元気になりました。

立木 おれ、最近、シマジのお陰で素人さんを撮るのがすごーくうまくなったような気がするんだ。

ヨネダ まあメンプレのハシモトさんがよく写るのはわかりますが、講談社のセオさんや東スポのフルカワさんが凄くイケメンに撮れていたのにはビックリしました。

立木 そうだろう。でもな、セオは編集能力があるんだが、段取りが甘い。いつだったか、中野香織さんをネスプレッソの取材で撮影するとき、すっかりおれの事務所に連絡するのを忘れていたんだ。おれが現場に現れないから、シマジが心配しておれに直接電話してきたんだ。おれはたまたま家にいたんで事なきをえたんだが、もし出張に出てでもしたら、大変なことになってたよな。まさかシマジが代わりに撮影するわけにもいかないしな。

シマジ そうなんだ。たしかにセオは抜けているところがある。でもおれはそこが可愛いと思っているんだ。しかし六本木の巨匠はそのとき、ピザの出前より早くやってきてくれたんだ。しかも一言も文句をいわなかった。いつものようにこうして冗談をいい、中野香織さんのこころを和ませていた。さすがにそのときは汗っかきのセオは大粒の汗をかいていたけどね。

ヨネダ セオさんは強運の人ですね。忙しい立木先生がたまたま家にいたとは、間一髪の荒技ですね。ぼくだったらきっとその場で失神していましたね。セオさんっていいよな。だいたいあんなにいい男に撮ってもらってーーーー。

立木 ヨネダ、妬くんじゃない。たしかシマジ語録に「ヤキモチ妬くより妬かれる人間になれ」ってなかったか。

ヨネダ ありました。たしかにありました。ぼくが編集したんですから間違いないです。

狭間 男性同士の会話って素敵ですね。今日は出席してよかったです。大変ためになりました。息子もみなさんのようなチャーミングな男に育てたいと思いました。

立木 ちょっと待って。狭間さん、シマジみたいな息子を持ったら母親として大変だよ。

シマジ そうです。オクフロは57歳であの世に旅立ちました。

狭間 でもシマジさんのような息子を持ったら毎日が面白いじゃないですか。

シマジ おれのオクフロもよく子供のころいった。「おまえは面白いね。だれに似たんだろう」って。

立木 突然変異だったに決まっているだろう。しかもシマジは今東光大僧正に薫陶を受けてから、ますます変な自信を持ってしまったんだ。

ヨネダ 人間には運命的な出会いってありますよね。

シマジ ある、ある。シバレンさんも今さんも開高さんも、そしてタッチャンも運命的な出会いだとおれは思っているんだ。

立木 おれとシマジは運命的というより、宿命的かもしれない。だからおれはもう諦めているんだ。深夜3賢人がおれの枕元にお立ちになり、シマジにこういっておけ、と忠告を賜るんだ。本当にシマジは世話のやける奴なんだぜ。

ヨネダ あっ、そういえばシマジさんに訊こう訊こうと思っていたことを思い出しました。

シマジ 女のことか、お金のことか。

ヨネダ 違います。よく最後の晩餐といわれますよね。シマジさんは明日死ぬとわかったら、最後に何を食べますか。

シマジ それは北海道のヒグマのステーキだね。とくに左モモだな。

立木 シマジはゲテモノ食いだからな。

シマジ いや。ヒグマの脂身は深山の雪のように白くて、ドングリ、クリ、クルミ、スモモの香りがするんだよ。じつに上品な肉だ。しかも凄い精力剤なんだ。

ヨネダ どんな風にですか。

シマジ おれの年齢で朝、痛いって目が覚めるんだ。

立木 今度おれを誘ってくれ。試してみたい。シマちゃん、大好きー。

ヨネダ もちろん、ぼくもよろしくお願いします。

シマジ 狭間さん、あの痛さは男性にしかわからないものなのです。

狭間 ーーーーーーーー。

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