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第10回 双葉社 週刊大衆編集部 手塚祐一氏 第1章 テヅカは隅田川沿いの"サロン"を訪れた。

<店主前曰>

あまたいる編集担当者のなかで、双葉社の手塚祐一だけには頭が上がらない。ちょうど1年前にテヅカが持ってきた単行本の書き下ろしの企画を承諾してから、多くの連載と遊びにまぎれ、まだ20枚しか書いていないのである。約束は400字x200枚の原稿を去年の春先まで書き下ろす予定だったのだが、遅々として進まずである。題して『シマジ流・男の礼儀作法』という本である。テヅカは編集者としては比較的やさしいヤツで、ずっと温かく待っていてくれているのだ。
そのうちテヅカが書籍編集部から「週刊大衆」へと移動になった。内心しめしめと思っていたら、「うちの会社はどこへ移ろうと、企画を考えた編集者は、どこででも自分でやることになっているんです。だからシマジさん、ぼくからは一生逃げられないのです。シマジさんは伊勢丹のメンズ館8階に”サロン・ド・シマジ”を作り、沢山連載を抱えてお忙しいのはわかりますが、この春くらいにはホントに脱稿してくださいよ。去年の年末、たまたま本屋に入ったら、島地勝彦責任編集「マグナカルタ」という雑誌が創刊されているではありませんか。ぼくはビックリして買いました。読んでまたビックリしました。レトロっぽくてしかも斬新でセンスがいい雑誌ですよね」
「そうか。テヅカにみつかってしまったか。そうっと創刊したんだがなあ」
「朝日、読売、日経にもデカデカ広告が載っていましたよ」
「テヅカ、武士の情けだ。許してくれ。必ず近々200枚は書き下ろす」と店主は深々とテヅカに頭を下げた。

シマジ テヅカ、今日は凄いぞ。国際事業部で活躍しているフランス人のアルノー・マルタンさんと同じ国際事業部で働いている木水恵梨奈さんが通訳としてやってきて、4人のトークショウなんだよ。

立木 ちょっと待った。シマジ、おれを忘れてはいませんか。

シマジ ゴメン、ゴメン。重要なキャラクターを忘れていた。

テヅカ はじめまして。双葉社のテヅカです。

立木 今日の撮影は楽だわ。

シマジ どうして。

立木 だってテヅカはイケメンだからさ。

シマジ おれの担当者のなかでもテヅカはなかなかのイケメンなんだ。アルノもイケメンじゃないか。

立木 今日は4人か。資生堂本社でよかったな。これが広尾のサロン・ド・シマジだったら大変なことになっていたぞ。

シマジ でもタッチャンは狭くてもちゃんと撮影しているさ。アルノ、ヨーロッパではSHISEIDO MENシリーズのなかで、とくにアイスーザーがバカ売れしているって本当なの。

アルノ その通りです。ヨーロッパの男性は目のまわりから年を取ると思っているんでしょう。まぶたがたれてこないように毎日一生懸命ぬっていますね。ぼくも最近はじめました。

テヅカ アルノさんはフランスでもSHISEIDO MENの仕事をしていたんですか?

アルノ いやいや、いままでフレグランスの仕事をしてきました。

シマジ そうか。資生堂からヘッドハンティングされたんだね。

アルノ そういうことです。

シマジ アルノはフランスにいたときはSHISEIDO MENを使っていたの?

アルノ まだ目覚めていませんでした。日本にきてからぼくはSHISEIDO MENを使い出したのです。まだ若いからぼくは、クリームはスキンエンパワリングクリームではなくトータルバイタライザーを使っています。日本の冬はヨーロッパ並の乾燥肌になってしまうからこれで防いでいます。

シマジ じゃあ、乳液はアクティブコンセントレイテドセラムではなくモイスチャーライジングエマルジョンを使っているんだね。

アルノ そうです。ぼくにはまだアクティブコンセントレイテッドセラムは勿体ないです。ところでシマジさんはどんな香りが好きなんですか?

シマジ 伊勢丹のサロン・ド・シマジではSHISEIDO MENのフルラインから、ペンハリガンのオー・デ・トワレのブレナムブーケ、トルフィット&ヒルのシェービングクリーム、オーセンティックNO.10も売ってるんだけど、好きな香りはブレナムブーケとNO.10かな。チャーチルやチャールズ皇太子が好きなのがわかる。香りが優雅なんだ。

アルノ シマジさんは柑橘類が好きなんですね。

シマジ そうだね。

木水 この間の日曜日、パークハイアットでバーテンダーをしている女友達と夕刻シマジさんのバーを訪ねたんですが、お客さまがいっぱいで入るのを遠慮したんです。

シマジ それは残念でしたね。そういうときは常連が気を利かせて場所を譲ってくれますから、遠慮しないで入ってきてください。何人もSHISEIDO MENの熱狂的なファンがいますよ。

木水 それでは今度勇気を持って入店いたします。

シマジ ぜひアルノも連れてきてくださいね。

立木 シマジ テヅカにいつもの肌チェックはしなくていいのか。

シマジ そうだ、忘れていた。木水さん、お願いします。

木水 はい。やりましょうか。

シマジ さあ鬼が出るか蛇が出るか。

木水 Eでした。

テヅカ Eでしたか。やっぱり週刊誌に移ってから徹夜が増えましたからね。

シマジ そんなことはない。ちゃんとSHISEIDO MENの5点セットを毎日使っていれば、Dくらいか運がよければCになる。第一、テヅカ、いままで何かつけたことがあるのか。

テヅカ 何も使ったこともぬったこともありません。

立木 イケメンが泣くぞ。いまからでも遅くないから何か使ったほうがいい。

シマジ テヅカ、今日は幸い資生堂からSHISEIDO MENの5点セットをいただけるから、明日から使ってみてくれ。若いから1ヶ月でDやCに肌チェックのランキングは上がるからやってみな。

テヅカ ありがとうございます。さっそく使ってみます。

シマジ 一ヶ月くらいSHISEIDO MENを使って伊勢丹のSHISEIDOでチェックしてみたらどうだ。

テヅカ そうします。

シマジ よくくるお客でモリマサというヤツは2ヶ月徹底的にSHISEIDO MENを使って、EからCになったとみんなに自慢していたぞ。でも週刊誌の編集者は面白いけど大変だろう。

テヅカ シマジさんがよくいわれるようにじかあたりの面白さがありますよね。

シマジ 最近面白かったじかあたりの取材話をしてくれないか。

テヅカ そうですね。隅田川に伝説のカリスマホームレスがいるという話を聞いて、そのカリスマホームレス・スーさんを訪ねたんです。

シマジ 面白そうだ。

テヅカ 観光客で賑わう浅草雷門から歩いて6分、隅田川沿いの遊歩道の一角に、例のブルーシートで覆われたスーさんの”家”があったんです。川を挟んで東京の新名所・スカイツリーがデンと聳える。交通至便、日当たり風通し良好、都心の一等地にある”一戸建て”のスーさんの住まいの広さは、横1.5㍍、奥行きが2㍍ちょっと。立つと頭がつっかえる高さだが、狭さは感じさせないたたずまいでした。入り口にはボンベ式のコンロと小さな棚があり、調味料や即席みそ汁、漬け物などが整然と置かれているんです。床はスノコの上に絨毯が敷いてあって地面から5㌢ほど床高になっていて、とっても居心地がいいんです。

立木 まるで子供のころ作った”秘密基地”みたいだね。

シマジ スーさんという人は生まれながら器用なんだろうね。じっさい人間は一畳あれば生活できるものな。

テヅカ たしかにスーさんはほかの仲間の住み家を何軒も作ってやったそうです。「木で枠組みを作って花見シーズンに捨てられた青いシートを被せてね。段ボールだけじゃ冬は寒いし夏は暑いし、それよりもなによりもわびしいだろう」とスーさんがいっていました

立木 夜はやっぱりローソクなのか。

テヅカ それが壁のスイッチを入れると、ちゃんと電気がつくんですよ。

シマジ 電線から盗電しているのか。

テヅカ それがすごいんです。スーさんは古い自動車のバッテリーをガソリンスタンドからもらってきて、いろいろ工夫して電化生活しているんです。

シマジ たいしたものだね。

テヅカ スーさんの日常はじつに勤勉そのものなんですよ。朝4時起きで3、4時間空き缶集めに自転車で回る。それから家に戻りスチール缶は売れないので、それから取り除く選別作業を終えると昼食。そしてシエスタ。夜は7時から12時まで再び缶集めに出かける。そして一杯やって1時には寝るそうです。「北京オリンピックのころは1キロ80円で売れたから月5万円にはなったが、最近はどんどん値下がりして生活は厳しくなったよ」とスーさんはこぼしていたが、かれは拾ったものを食べたり、炊き出しに並んだりはしない。自分で稼いだ金で必要なものを買って生活しているんです。

シマジ 生活保護なんて受けようとしないんだね。スーさんは誇り高い人間なんだ。

テヅカ ときどき役所の人がきて生活保護を申請してくれれば、いつでも相談に乗りますよっていってくれるそうなんですが、スーさんはありがたいけど、まだ体が丈夫なうちは福祉の世話にはなりたくないそうです。「第一、生活保護をもらったらここを出なきゃいけないし、好きな酒も飲めなくなる。稼げるうちは頑張るつもりさ。酒は自分の金で飲むのがいちばんうまいんだよ」とスーさんはいっていました。

シマジ スーさんはいくつなんだ。

テヅカ たしか65歳です。

シマジ スーさんは好きな酒は日本酒か焼酎か。

テヅカ ぼくがご馳走になったのは焼酎でしたね。

立木 シマジ、いくらカリスマホームレスでもシングルモルトは飲まないだろう。

シマジ いや、スーさんにシングルモルトを一本差し入れしてあげようと思ったまでだよ。今年は寒いからスーさんも大変だろうね。

<次回1月18日更新>

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