何らかの刺激により、皮膚の下を走る知覚神経の末端にヒスタミンなどの「かゆみ物質」が作用すると、かゆみとして脳に伝わります。かゆみを感じて皮膚を掻くと、さらにヒスタミンが分泌されて、かゆみが増すという悪循環に陥ります。
皮膚は、表皮の最も外側にある角層のバリア機能により、外界からのウイルスや細菌などの侵入と、体内からの水分の蒸散を防いでいます。しかし、冬の乾いた空気や暖房によって角層の水分量が減少すると、皮膚は乾燥状態(ドライスキン)になります。
かゆみを伝達する知覚神経の末端は、正常な皮膚では表皮と真皮の境界に留まっていますが、ドライスキンでは角層近くにまで伸びています。そのため、外界からのちょっとした刺激にも反応し、かゆみを生じやすくなります。
かゆみを引き起こす原因物質がわかっていれば、原因となるものが直接皮膚に触れないようにしましょう。どうしても避けられず、皮膚の表面についてしまった原因物質や汗・汚れはきれいに洗い落とし、清潔にすることでトラブルの原因を減らすことができます。そして十分な保湿を心がけましょう。肌にうるおいを与えることでバリア機能が高まり、外部刺激からも肌を守ることができます。かゆみがあるときは、ちょっとした刺激がさらにかゆみを増幅させるため、髪などが当たらないようにし、刺激の強い食べ物やストレスを避けましょう。症状が続くときは皮膚科を受診することをおすすめします。皮膚科では原因物質の解明や、抗ヒスタミン薬などの処方を行います。
お風呂あがりは肌がうるおっているように見えますが、からだを洗うことで皮膚の脂分が失われ、さらに入浴後は体温が上昇しているため水分が蒸発し、乾燥状態にあります。入浴中・後のケアで、乾燥とバリア機能低下によるかゆみを防ぎましょう。
●硬いタオルなどでゴシゴシ洗うことは、角層を必要以上に剥がすので禁物です。手または柔らかいタオルを使い、石けんやボディソープはよく泡立てて、泡でなでるように洗いましょう。
●お湯の温度が高すぎると肌の皮脂膜が取り除かれ、肌が乾燥してかゆくなったりします。お湯の温度は冬で40度前後、夏で38度前後とし、熱いお湯の使用は控えましょう。
●お風呂からあがってしばらくすると全身がかさつくのは、お湯で肌の皮脂膜が取り除かれ、水分が奪われてしまうからです。ボディケアもスキンケアと同様に、お風呂からあがったら、肌が乾ききらないうちにすばやく、ボディ用の乳液などでうるおいを補うお手入れをしましょう。
●入浴後や就寝前など、体温が上がるとかゆみが増します。かゆみを鎮める応急処置には、肌を冷やすのが効果的です。肌を掻かずに、冷水で濡らしたタオルなどをかゆい部分にのせて、肌をクールダウンさせるようにしましょう。
愛知県 豊橋市
こやま皮フ科クリニック 院長 小山知来 先生
医学的根拠に基づいた診療と、わりやすく丁寧な説明を心掛け、みなさまが安心して治療を受けていただけるよう努めていきたいと思っております。お肌に関する悩みやトラブルは、何でもお気軽にご相談ください。みなさまのお肌が健康で毎日楽しく過ごせますようお手伝いをさせていただきます。