主婦や調理師、美容師など日常的に水仕事をする方や、紙を扱う仕事に就いている方では、一般に「主婦湿疹(手湿疹)」と呼ばれる「慢性刺激性接触皮膚炎」という手の皮膚疾患がよく起こります。
水や洗剤、紙に触れる機会が多いと手指の皮膚表面の皮脂膜が減少・消失し、皮膚のバリア機能が低下します。すると刺激を受けやすくなり、湿疹を生じるのです。また、発症・増悪にアトピー性皮膚炎が関与する場合もあります。
症状には「乾燥型」と「湿潤型」があり、乾燥型は手指・手の平に乾燥と痒みを伴う湿疹が現れ、表皮が剥けたり薄くなったりしてヒビやアカギレを伴う場合も多いです。湿潤型は手指・手の平・手の甲など広範囲に紅斑、丘疹、水疱を生じ、多くの場合で痒みを伴います。季節的に秋冬は乾燥型、春夏は湿潤型が多く見られます。
症状が主婦湿疹と似ているため間違われやすい皮膚疾患として、以下のものが挙げられます。
●汗疱(かんぽう)
手の平や足の裏に小さな水疱が生じます。手の平や足の裏に汗をかきやすい人に多く、汗が皮膚から排泄されずに溜まることで起こると考えられています。
●掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
手の平や足の裏に小さな水疱が多数生じて膿疱(膿が溜まった皮疹)化したもので、痒みを伴う場合もあります。
●手白癬(てはくせん)
真菌の一種である白癬菌(いわゆる水虫)の感染により、手の平全体に鱗屑(りんせつ)(皮膚から剥がれかかった角質)が付着し、角質増殖(硬くなる)を生じます。また、片手のみのことが多いです。
●手カンジダ症
真菌の一種であるカンジダ菌の感染により、爪の変形や、爪の周囲や指の間に発赤・腫れなどが見られます。
●アレルギー性接触皮膚炎
アレルギーの原因となる物質(抗原)に何度か接触しているうちに紅斑や丘疹などの症状が現れます。抗原は洗剤、ゴム、金属などさまざまです。
失われた皮膚のバリア機能を補うため、保湿が最も重要です。水仕事の後、入浴・手洗い後は常に保湿剤で皮膚を保護するよう心掛けましょう。
加えて、発症・悪化の原因となる刺激物質に直接触れないようにします。例えば水仕事の際は水に直接触れないよう手袋をしますが、ゴム製は刺激になりやすいので綿の手袋の上からゴム手袋をはめるとよいでしょう。また、洗浄剤は低刺激製品を選ぶことをおすすめします。
治療の基本は、1)発症・悪化の原因となる物質を避けること、2)保湿剤で皮膚を保護することです。保湿剤にはワセリン、尿素製剤、ヘパリン類似物質製剤などがあり、症状や程度に合わせて処方されます。市販の保湿剤で改善せず症状が長引くときは、早めに皮膚科を受診しましょう。
特に炎症が強い場合は、その程度に合った強さのステロイド外用薬が処方されます。ステロイド外用薬の強さにはstrongest、very strong、strong、medium、weak の5段階があり、炎症が弱い場合はmediumまたはweak、炎症が強い場合はstrong以上が用いられます。また、痒みが強い場合は、抗アレルギー薬の内服が処方されることもあります。
宮崎県 宮崎市
当院では、お子さまからお年寄まで地域の皆さまに信頼される医療を提供することを目標としております。皆さまの健康を見守る「かかりつけ医」でありたいと考えておりますので、皮膚のトラブルやお悩みがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。