入浴は、体の汚れを洗い落として清潔にし、心身ともにリラックスをもたらします。肌にとっても、しっとりする効果があるように思われますが、実は入浴によって肌には乾燥が起こっているのです。
湯船に浸かっていると、お湯の中で皮膚が水分を含み、一見、潤っているように見えます。しかし、皮膚表面にある角層は、水分を含んで飽和状態(水分を最大限含んだ状態)になり、角層細胞の間隔が広がることで、肌の潤いを保つ天然保湿成分やセラミドなどが流れ出ているのです。また、ナイロンタオルなどで体をゴシゴシと擦り洗うと、皮膚のバリア機能が破壊され、保湿成分がさらに流れ出てしまうことになります。
入浴後はバリア機能が失われているため、また温まった体が熱を放散させるため、皮膚から水分や脂質が抜け出て、より乾燥が進みます。さらに、バリア機能の喪失は外的刺激に対して敏感になり、かゆみを伴う場合もあります。
このような皮膚の乾燥は、お湯の温度が高いほど、また入浴時間が長いほど起こりやすくなります。
入浴中・入浴後の皮膚は、水分や脂質を蒸散・流出しやすい状態にある一方、水分や脂質が皮膚に浸透しやすい状態であるとも言えます。したがって、保湿成分の含まれた入浴剤を湯船に入れることで、入浴後に皮膚の潤いが保たれます。
では、温泉はどうでしょうか?温泉水はアルカリ性あるいは酸性に偏っています。アルカリ泉は皮脂を溶かして角質を軟化させ、酸性泉は古い角質を落とします。そのため肌はすべすべになったように感じるのですが、実は皮膚のバリア機能が低下している状態です。また、温泉は温度が高めなので、入浴後の乾燥をより引き起こしやすくなります。
入浴時は、低刺激性の洗浄剤とやわらかい綿素材のボディタオルを使い、よく泡立ててやさしく洗います。入浴後は時間の経過とともに乾燥が進むので、できる限り早く保湿を行いましょう。保湿剤は顔だけでなく腕や足も塗りましょう。保湿剤の剤形については、部位や塗りやすさによりクリームやローションなど適した形を選んで頂いてかまいませんが、特に乾燥する冬場はクリームや軟膏タイプの保湿効果が高い剤形がお勧めです。また保湿剤のみで乾燥やかゆみが改善しない場合は、炎症を起こしている状態(皮脂欠乏性湿疹)も考えられますので、皮膚科で診察を受けてください。空気が乾燥する冬は、特に念入りにケアすることをおすすめします。
大分県 大分市
当院は地域の皮膚のかかりつけ医として、地域の皆様が、快適な生活を送ることができるようお手伝いいたします。お肌のトラブル、皮膚に関するお悩みごとがありましたらどうぞお気軽にご来院ください。